第26話

「……これで全員だな」


「お疲れ様でした珠希様」


 最後の一人、ルシフェラが足止めをしてくれていた成田智也なりたともやという生徒を無力化させた。


「強かったか?」


「いえ、この程度」


 確かに、ルシフェラの何も傷ついていない体を見るとそんなに苦戦はしていなかったかのように見える。


「やはり狂化の首輪のせいでしょうか。自我もなくただ愚直にゴリ押しするだけ。はっきり言って余裕でした」


 ブン!と剣を振ってから鞘へ戻す。


「他の人間軍は」


「全滅させた。さすがにイラついたからな」


 珠希が今回救った生徒は5人。稲村、神田、山田、佐藤、鳴神で、その中でも女性である神田と佐藤はそれはもう人間軍に口にも出したくもないくらいに酷いことをされていた。


 本音を言えば今すぐ人間軍を絶滅させたいが、そこは鋼の意思を持って我慢。きちんと全員を救った後にぶん殴りに行くと決める。


「こちらで最後ですか?」


 ラピスが現れる。鳴神は男なので首筋を掴んでからラピスへと差し出した。


「ラストだ。ミリーナには今度なにかお礼をすると伝えてくれ」


「かしこまりました」


 ラピスも鳴神の首筋を持ってからミリーナの元へ転移。そして20秒もしない内にラピスが戻ってきた。


「なんと?」


「報酬は君自身が良いとーーーあの、珠希様?ミリーナ様とは一体どのような………」


「ーーーそうか、ならば今日にでもミリーナの元へ行こう。ベルセルク閣下へ報告に行くぞ」


「ーーーーー了解です」


 ラピスは聞きたい気持ちをぐっと抑えて二人を転移させた。









「………全滅?それは本当かい?」


「あぁ。ついついキレてしまってな……まずかったか?」


「あぁ……いや、全然悪くないよ。後で見届け人のラピス含む兵士で確認させてもらうが……何はともあれ、助かった珠希殿。貴殿のおかげで我々の勝利に1歩近づいた」


 椅子から立ち上がり珠希へ頭へ下げるベルセルク。


「……顔を上げてくれベルセルク閣下。ついやりすぎたとはいえーーー仲間のためだ。そのためだったら助けるのは当然のことだろう?」


「ーーーフッ、確かなその通りだな」


 ベルセルクはゆっくりと顔を上げる。


「この戦争が終わったら、是非私の収める領地へ来てくれ。歓迎しよう」


「あぁ、その時は是非、招待されに行こう」


 珠希とベルセルクは握手を交わした。


「一応人間軍は退けたが、ここはどうするんだ?」


「戦争が終わるまではここは守りに入るだろう。向こうも少なくない被害を被ったはずだ。暫くは安全だろう」


「そうか、それは何よりだーーー済まないがベルセルク閣下。あと少しほどここの砦で借りている部屋を使っていいか?」


「あぁ。珠希殿、遠慮なく使うがいい」


「ありがとうーーー行くぞルシフェラ」


「了解です珠希様」


 珠希とルシフェラが部屋から出ていく。ベルセルクは二人を見送った後にラピスを呼んだ。


「ラピス」


「ここに」


 シュ、と現れて跪くラピス。


「戦後処理だ。ラピスとアシュタルをリーダーとした隊を作り、人間軍が拠点にしていた砦へ向かい、人間の死体の数を確認してくれ」


「承知しましたーーーーその後は」


「壊せ。アシュタルに魔剣の使用を許可する」


「かしこまりました。今すぐに部隊を再編してきます」


「頼んだ」


「それでは」


 ラピスの姿が消え、ベルセルク一人になる。そして、ベルセルクはルシフェラの羽の色を思い出した。


「……あの色はほぼ堕天使……何をしたのかは知らないが、珠希殿は相当モテるのだな」









「珠希様ーー!!」


「おっとーーーただいま、リリア」


 部屋へはいるなり、ピンク色の髪の美少女が珠希の胸へ飛び込み、珠希はそれをしっかりと受け止めた。


 しかし、それをちょっとよく思わない者が一人居た。


「お怪我はございませんか?」


「あぁ。無傷だーーーーリリアに頼みたいことがあるけどいいかな?」


「はい!お任せ下さい!」


「それじゃあさ、これからオスクロルの所に行って、ベルセルク閣下の所は無事に解決したってことを伝えて欲しいのだ、ミリーナの元へ行って欲しいんだ」


「魔王様のところは分かりますけど、ミリーナ様もですか?」


「あぁ。ミリーナには世話になったからな。ミリーナに今夜おじゃまするということを伝えて欲しいのと、ついでにリリアも手伝いをお願いしたい」


「分かりました!」


「ありがとう。明日ご褒美上げるな」


「~~~っ!今すぐに行ってきます!」


 リリアは顔を赤く染めた後に転移で姿を消した。


 これでようやくーーーールシフェラとキスができる。


「珠希様ーーーキャ!」


 珠希はルシフェラを抱えあげると、そのままベッドへ押し倒し、自身はその上にまたがる。


「約束」


「はい、そのーーーーんっ」


 唇を合わせる。次の瞬間、ルシフェラの顔は垢く染まる。


「ーーー綺麗だね、ルシフェラ」


「そ、その、珠希様。恥ずかしーーーんっ」


 二度目。珠希はルシフェラに手を合わせてそのまま指を絡ませる。


 こうして、彼らはじっくりと口付けを堪能し、ルシフェラの天使の翼は完全に黒へと染まった。


「その……初めて……なので」


 2人は、体を強く重ね合った。



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