第23話
体力も気持ちもルシフェラのおかげで大分回復した珠希。現在は作戦会議が行われている天幕の端で黙って作戦を聞いていた。
今回、この戦争の総指揮を任されているのさ
一応、珠希はこの作戦の内容を聞いているが、珠希の役目はクラスメートを拉致して助けること。ベルセルクからもそれだけに集中しろとの言葉を貰っているため、思う存分に集中できる。
「隊長!人間軍!動き出しました!」
「よし、我らの力を見せてやれ!」
うおおおおー!!という気合いの入った声が天幕に響き、我先にと悪魔が天幕から出ていく。
「珠希殿」
珠希と頃合を見てから天幕を出ようとしたら、アシュタルが近づいてきた。
「内容は、閣下から聞いております。どうか、ご武運を」
そして、アシュタルも天幕から出ていく。残ったのは珠希、ルシフェラ、それとラピスのみ。
「………心強いな」
ぼそっと珠希が放ったセリフに、二人が頷く。
「それじゃ二人とも……作戦通りに」
「御意」
「おまかせを」
珠希は魔眼を輝かせ、準備をし、ラピスが持ち前のすばやさで敵軍と味方の位置把握を行う。
その間僅か5秒。珠希も丁度知りたいことをしり、脳内に焼き付けたと同時に、ラピスは全てを終わらせた。
「………え、もう終わったの?」
「はい。私にかかればこれくらいは余裕です」
「ラピスは魔王軍の中でもこの手のことは魔王でも敵わない。その実力を買って諜報舞台にスカウトしているが………」
「私は閣下の部下なので………」
「お、おう………」
「それに………」
ラピスの右目がオレンジ色に輝く。その輝きは、ミリーナのよりは眩しくないが、確かに光を放っていた。
「私には『俯瞰の偽眼』がありますので、相性がとてもバッチリなのです」
俯瞰の偽眼。本人の実力に比例し、上から戦場を見渡せる距離と範囲がでかくなる。ラピスの実力は、そもそも偽眼を埋め込むのにはそれなりの実力がいる。正確に言えば、魔王12幹部のフォルカウスくらいの実力がいる。
そもそも吸血鬼自体が、魔法特化で肉体的な強さは全くなく、フォルカウス自体が、吸血鬼の中でも特別なのだが、それでもリリアよりも弱い。
つまり、ラピスはフォルカウスよりも強いのだ。それでいいのか
「状況は?」
「私達と人間軍が接敵するまでに、まだまだ時間はあります。珠希様が魔法を放っても充分私たちには影響ないかと」
「分かった……それが聞ければまず安心だな!」
ドン!と珠希が纏う魔力が一気に増幅し、普段は見えない魔力が可視化される。
珠希は、魔眼によって
(俺は今から………人を殺す)
生まれてから1度も殺人などを起こしたこともない珠希。そう思うと、手が震えて、座標が上手く設定できない。
(……怖がっているのか、俺は……そりゃそうか。殺人……だもんな)
震える右手を何とか抑えようと左手で掴む。しかし、それも意味は無い。
「……くっ」
時間はあるとはいえ、中々覚悟の決められない自分に嫌気がさしてくる。奴らは、美波を……友達を、クラスメートを傷つけたのにクソみたいな人間。珠希は、どうしても奴らは人間という括りに入れたくはなかったが、体が人を殺すというとこを拒絶している。
「……我が君」
その時、珠希の後ろから優しく抱きつく天使ーーーいや、堕天使がいた。ルシフェラは、右手は優しく珠希の右腕を撫で、左手は、お腹へ回す。
「……ルシフェラ?」
「我が君……怖いなら、私も半分背負います…お1人で、全てを背負う必要はありません」
耳元で、優しく囁くその言葉は、珠希の胸にストンと、落ち、先程抱きしめられた時のような安心感が珠希を包む。
「………ありがとう」
「…………いえ」
珠希はニコリとルシフェラに微笑むと、少し驚いたルシフェラは、少し頬を赤らめさせると、ぷいっ、と顔を逸らした。
その翼の色は、いつもよりも黒く輝いた。
「……ね、ルシフェラ。上手く出来たら、ご褒美欲しいな」
「……仕方ないですね、珠希様のご自由に」
「キス、でも?」
「………………………承知致しました」
翼がさらに黒くなった。
「言質、取ったからね」
「はい。ですので、思いっきりかましてください」
「任せて」
珠希の魔眼が蒼く、力強く輝く。それと同時に、不安定だった魔法陣はしっかりと形をなし始め、それは、三つに分裂し、勢いよく周り始め、紫色の光を放つ。
さて、ここで珠希が
誰かが、人を殺すためだけに作った、
「………
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