第21話
「着きました。珠希様。ここが、ローガルド戦域です」
「………ここが」
珠希がラピスに連れてこられた場所は、現在、ベルセルク軍が本拠地としている城の屋上だった。そこからは、戦場が一望できるほどの高さではないが、その景色だけで、戦争のやばさを感じ取れる。
「……酷いな」
「えぇ。我々も、人間も少なくない被害が出ております………早く終わらせなければ」
「………あぁ、そうだな」
珠希は戦争の痕をじっくりと眺め、もういいという風にラピスの方へ向き直る。
ラピスは1度頷き、踵を返す。
「それでは、行きましょう珠希様。ベルセルク閣下がお待ちにーーーーーー」
「珠希様ぁぁぁぁぁ!!!」
「ーーーぶっ!」
珠希は何かに顔を無理やり埋めた。
「………なるほど。リリア姫も中々思いっきたことをする」
「申し訳ない、ベルセルク閣下」
「いい。この際、ここまでサキュバスの本能をここまで出させる珠希殿を褒めてあげよう」
ルシフェラが少々トリップしているリリアの代わりに、オスクロルの命令で追いついてきたルシフェラが謝る。
あの後、珠希の目の前に本能で居場所を感じ取った場所へリリアが登場し、その豊満な桃源郷で、珠希を後ちょっとで窒息させる所だった。ルシフェラのおかげで事なきを得たが。
「………ベルセルク閣下。正直とても嬉しいがどうすればいい?」
「…………好きにさせておけばいいじゃないか?」
「………まじかー」
「えへへ……珠希様……ハズハズハズハズ………」
とりあえず、リリアの事は無視することにした。
「それで、件の異世界人かもしれないという情報だが」
「あぁ……部下が記録魔石で姿を写したものがある。これだ」
と、ベルセルクは珠希に向かって何かを投げたので、それを珠希は危なげなくキャッチする。
「…………」
使い方が分からなかったので、隣にいたルシフェラに起動をしてもらい、中身を見る。
「……………なるほど、確かにクラスメートだな」
今の珠希は服をお借りしている状態なため、制服ではないが、そいつは確かに珠希と同じで、来ていた制服を着ていた。
「名前は?」
「
別に珠希とはそこまでほとんど交友関係は無いが、行事の度に、クラスの先頭に立って盛り上げてくれるお祭り男。
「こいつだけか?」
「記録できたのはな。そいつ含め五人いる。我らはそいつらに中々苦しめられているのだ」
「へぇ………」
珠希が見るに、瞳に理性が灯っていなく、どこか幽鬼のように虚ろだ。それに、常に口も開けている状態なため、どこかゾンビのように見える。
狂化の首輪。ここまで恐ろしいのかと珠希は思った。これが美波に装着されていたら……と思うと、背筋がゾクッとした。
「………恐ろしいな」
「あぁ。その上、強いと来た。腕の立つものは今はちょっと少なくてな」
「ふーん…………」
珠希は知識の魔眼へ問いかける。一体どうすれば安心安全に狂化の首輪を外せるかを。
しかもこの首輪は特別製。その事を加味した
「……へぇ?」
方法と同時に、珠希は新しい魔法の知識も埋め込まれていることに気づく。
「………珠希殿。何か策は浮かんだか?」
「あぁ。ま、ベルセルク閣下にはかなり負担をかけると思うが……」
「構わん。聞かせろ」
「ーーーーーーーーーーーーーーー」
「そういえば、今更だがなんで来たんだ?」
「本当に今更だな君は………」
ベルセルクに与えられた部屋で一息付き、リリアがめちゃくちゃ甘えた様子で珠希に抱きつく中、先程まで頭の片隅に置いておいた疑問を投げかけた。
「なに、魔王に君の護衛を頼まれたからね」
「まじ?それは助かる」
珠希は魔眼のおかげで強くはなれたと思っているが、体やその他もろもろとまだまだ脆弱なので、魔王12幹部が直々に護衛してくれる事に感謝ていた。
(………ぶっちゃけリリアは戦闘力あるかは分からんしな)
もしうっかり死んじゃいましたでは話にならない。珠希はリリアを愛すると決めているからだ。
「暫く、私は君の剣だ。好きに使うがいい」
と、ルシフェラは珠希の手を取って、手の甲に口付けをした。
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