第20話

 自分でも何をしたいか分からなくなってしまったシリーズ。でも書き続けます。


 この作品は、作者のノリで続いております。

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「ベルセルク閣下の応援……?」


「あぁ」


 次の日、魔王モードのオスクロルに呼び出された珠希は、魔王12幹部である、ベルセルクが担当している戦争地区にて、強大な力を持った人族に、かなり攻め込まれているという情報が届いたらしい。


 それと、どうやらこの国ではあまり見慣れない服をきていて、髪の色もこの国ではあまり見ない黒髪だという。


 しかも服も一緒だと言うのだからもう間違いない。


(クラスメートか……)


 一緒につるんでいた友達五人の顔が思い浮かぶ、しかし、あいつらは知識の魔眼で確認したところ、大事な駒として、未だに美波が囚われていた王城で大事にされているため、しばらく命の危機にはならないだろう。


「行けるか?」


「当然」


 美波以外のクラスメートは『狂化の首輪』という特殊アイテムで命令に逆らえないようになっているため、意思もない、感情もない状態で戦争へ繰り出されている。


 ぶっちゃけ言うと、この戦争。珠希なら知識の魔眼の力で今すぐにでも終わらせることは可能なのだが、どうやらあの首輪。王が死ぬと次の瞬間に全部爆発する仕組みになっている。


(いやらしいやつ………)


 だから珠希はクラスメート38人を救うまでこの戦争は続くということ。


 じゃあ一人一人転移で連れ去ればいいじゃんとおもうかもしれないが、厄介なことに、首輪装着者の意識がない状態でしか、無理矢理外せないため、その手段も使えない。最低3人は見張りも着いている。


 だから、戦場で一人になったタイミングを見計らって拉致るしか方法はない。あとはミリーナ率いる技術班が何とかしてくれる。


「と、言うことだ。思う存分、珠希の力を使うがいい」


「はっ」


 珠希の横でオスクロルに向かって跪いていた、悪魔の女性が立ち上がり、珠希と目線を合わせた。


「初めまして。オスクロル閣下直属伝達部隊隊長のラピスだ。よろしく頼む、珠希殿」


「神楽珠希だ。しばらくよろしく」


 握手を交わして、2人はオスクロルへ向き合う。


「それでは魔王陛下。今からですが、お借りします」


「あぁ」


「……ん?今から?」


「はい。事態は一刻も争いますので。お手を」


「了解」


「……………あ、珠希。行くのならリリアに一言…………遅かったか」


 ラピスが珠希に手を差し出し、珠希は手を重ねる。オスクロルが思い出したかのように言ったが、時すでに遅し。ラピスと珠希は姿を消した。


「ーーー魔王様!珠希様は!」


 そして次の瞬間、リリアがしゅん!と姿を現した。


「………あー、珠希ならさっきラピスに連れられてーーーー」


「分かりました!」


 と、最後までオスクロルの言葉聞くことなく姿を消したリリア。


 あんな性格だが、リリアは充分実力は魔王12幹部並と言っても過言ではない。ただ、既に魔王であるオスクロルや、幹部であるハーロットが夢魔サキュバス族の中で飛び抜けて化け物なだけで、リリアも充分実力者だ。


「……珠希くん、大丈夫かなぁ……」


 魔王モードを解除して心配するオスクロル。その心配は、戦場の死の危険ではなく、リリアの本能を刺激させた責任的な意味である。


「……さて、私も仕事しないとね……」


 腕を振ると、空中に一辺が大体8mくらいの正方形が浮かび上がる。


(戦況は…………徐々にやっぱり押されてきてるわね)


 異世界召喚が行われた次の日から、若干優勢であった魔王軍が徐々に押され始めてきている。


 なかでも、魔王軍一の武力を誇るベルセルクが担当している場所が1番押されている。


(珠希くん送って少しは楽になるといいのだけれど……心配ね)


「ルシフェラ?いるかしら」


「どうした?魔王よ」


 声をかけて数秒で呼び掛けに答えたルシフェラ。真っ黒な羽を羽ばたかせながら、オスクロルの目の前に現れた。


「申し訳ないのだけれど、あなたもベルセルクの所の応援頼めない?彼がうっかりで死なないように」


「ふむ………了解した。しっかりと護衛してくるよ」


 そしてまた黒の翼をはためかせて消えた。とりあえず、これでという最悪の未来が遠ざかり、1番ベストな未来に近づく。


「………頑張ってね珠希くん。あなたは知識の魔眼でなんでも知ってるけれど、違うのだから」


 オスクロルは、両手を胸の前で重ねて、珠希の無事を祈った。

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