第15話

「……知識……それも過去から今までか……」


「そ、それは強力なものですね」


「しかも、効果はそれだけにも収まらない」


 珠希は知恵の魔眼で今は失われし魔法である転移の魔法を習得した時のことをベルセルクとクロコ、エーテルに話した。


 ちなみにだが、魔王軍が時々一瞬で消えるのも転移だが、あれは効果範囲や色々なものが制限されている完全なる下位互換であるが、珠希が引っ張り出した転移にはそのような制限はない。


 珠希は3人に知識を引っ張り出すと同時に、知りたい内容が自分に対して非常に分かりやすい感じに翻訳してくれることも話した。


「………」


「……………」


「…………」


 3人は驚きで口が塞がらない様子だった。


「ベルセルク閣下」


 しかし、そこでベルセルクの背後から何者かが登場。定例会議中ではいかなる者も幹部と魔王、それに選ばれし者しか広間に入れないが、既に終わったので、誰が入ってきても問題は無い。


 こそこしとベルセルクの耳に何かを話した後に、その者は姿を消した。


「済まない珠希殿。なにやら俺の領地で面倒事が起きたようだ。その内、俺が治めている領地にも来てくれ」


「あぁ、なにかは知らんが頑張ってくれ」


「ありがとう」


 フッ、と笑ってから姿を消したベルセルク。エーテルも何やらこの後用事があるようなので一礼してから広間を出た。エーテルはどうやら人族なので転移は使えないようだ。


 ちなみに、クロコも同じタイミングで帰った。なにやらトレーニングの時間だとか。


「次は私ですね」


 次に珠希の元へ来たのは、真っ白な羽が生えている天使エンジェルのミカレウスだった。


「私は、天使エンジェルのミカレウス。よろしくお願いします、珠希様」


「よろしく、神楽珠希だ……しかし、天使エンジェル?族はつかないのか?」


「えぇ、この地に遣わされた天使は私一人ですから」


 神が遣わしたとされる唯一の天使ミカレウス。さすがに神様も人間のやったことに危機感を覚え、天界一の実力者であるミカレウスがやってきたのだということ。


「神自身は参加出来ないのか?」


「はい。なにやら世界というのには容量というものがあり、神が介入するとその容量がオーバーし爆発するらしいです」


「爆発!?」


 ちなみに言うと天使の介入も結構なギリギリ違反行為に当たるが、今は神が頑張ってこの世界の容量を増やしているらしい。


 それでは今後もよろしくお願いしますと言って消えていったミカレウス。


 そろそろリリアかミリーナに会いたくなってきた珠希。次に来たのはリリアやオスクロルと同じ、夢魔サキュバス族のハーロットだった。


「………サキュバス?」


「あら、正解。よく分かったわね」


 クスクス……となにやら面白そうに笑うハーロット。


「……まぁここに来てからサキュバス三人目だし……さすがに分かる。神楽珠希だ。よろしくな」


「ハーロット。一応、魔王様の二番手を名乗っているわ。よろしくね、珠希」


 握手を交わす二人。しかし、珠希は繋がれた手から何かが吸い取られる感覚がした。チラリとみても、ハーロットはニコニコと笑みを浮かべるだけ。


(………これは吸精譲渡トランスファーを使われてるな……)


 少しばかり意趣返しに珠希も同じことをやり返した。精力の流れを一旦止めてからハーロットに奪われた精力を取りもどす。


「………へぇ?」


「悪戯にしては、すこし稚拙だったな」


「……ふーん?あなた、中々面白いわね。気に入ったわ。いつかサービス色々としてあげるわ。だって私ーーー」


 サキュバスだからと言って、珠希の頬にキスを落としてから、しっかりとウインクもして消えていった。

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