第14話
「………よし」
「いや、何がよしなのか詳しくそこは聞きたいな珠希くん」
「……ミリーナ」
もちろん、よしと呟いた理由は、多少なりとも満たされたからである。
隣に移動してきたミリーナが、両手を広げてよこせとしてきたので、優しくフォルカウスを抱き上げてミリーナに渡す。
「……全く。フォルカウスも馬鹿なことをしたものだ。私はこいつを送っていくからあとは頼むぞ」
と、フッと姿が消えたミリーナとフォルカウス。
「……フッ、見事な腕前……いや、この時は口前と言った方がいいのか?」
「……あんたは、確かベルセルクだったか?」
「いかにも」
目の前の悪魔は大仰に頷き、珠希に向かって手を差し出した。
「俺の名前はベルセルク。敵対している人間には
「あぁ、よろしくベルセルク閣下」
珠希がベルセルクと握手をかわすと、2人に大きな影ができる。珠希が後ろを振り向くと、そこには幹部であるフェンリルが珠希に顔を寄せており、なにやらくんくんと匂いを嗅いでいた。
「……こいつは?」
「魔族代表の神獣フェンリルだ。こいつも、珠希殿の不思議な雰囲気に興味を持ったらしい……撫でたらどうだ?」
フェンリルはじーっと珠希を見つめ続ける。フェンリルは体長が5mくらいあるので、見つめられたら普通に圧力を感じるのだが、珠希は恐る恐るフェンリルの鼻先を撫でてみた。
するとーーー
「………お?」
「……ふっ、どうやら気に入ったようだな」
一瞬だけ、チロっと舌で手を舐めた後に、顔を珠希へ押し付けたフェンリル。目を閉じてなんだか嬉しそうな感じだ。
「おぉ……よしよし……」
もっと撫でろとねだってくるフェンリルを思う存分撫でてやる。
(……なんだこいつ…意外と可愛いかもしれん)
充分にもふもふを堪能した珠希。撫でるのをやめて、フェンリルから離れると、フェンリルは珠希の手をもう一度舐めてから姿を消した。
「……今のは?」
「フェンリルが珠希を気に入った証拠だな」
「……へぇ………」
これからちょくちょくあいつをもふもふしようと決めた珠希だった。
次に珠希の元へ来たのはエーテル・カリオン。先程のキスを手で隠していたが、ちょくちょくちらりと見ていた人族のお姫様である。
「はじめまして珠希様。今は亡き王国の姫であったエーテル・カリオンと申しますわ」)
「よろしく……姫様?……カリオン様とお呼びした方が………?」
「いいえ、今や私も魔王様の庇護下に置かれていますので、敬語も、様付けも不要です」
「……そうか。よろしくエーテル」
「はい。よろしくお願いします」
にこりと笑って握手をするエーテル。しかし、次の瞬間、エーテルは先程の珠希とフォルカウスのキスのやり取りを思い出してしまい、顔が赤くなった。
「………どうした?」
「いえ………その、吸血鬼が吸血をする行為は大変意味がある行為なのでーーーー」
「ーーー吸血鬼が血を吸う行為とても神聖なものだ。少なくともあのフォルカウスが貴様を気に入った理由がある」
新たに聞こえた声に珠希は後ろを振り向くと、形は人型であるが、爬虫類のような格好をした幹部が立っていた。
「俺の名前はクロコ。龍人族だ。よろしくな珠希」
「あぁ、よろしくなクロコ。龍人とは、龍の人という認識であっているか?」
「あぁ、概ねそういう認識で大丈夫だ。それで、あのフォルカウスが気に入るようなことをなにかしたのか?」
「んー………」
珠希は少し考えたが、その理由はすぐに見つかった。きっと、あの目が合った時にあの魅了にかからなかったことか。
珠希は少し待てといい、知識の魔眼へ問いかける。その問いに答えるため、魔眼は蒼く輝き情報を珠希へ提供する。
魔眼の力を行使しているのを見て、ほぅ…と興味深げに見るクロコとベルセルク。
やがて、蒼の光が収まると、珠希は得た情報を元に話し始めた。
「……どうやら、吸血鬼特有の魔法である
「なるほど……あの好奇心旺盛な吸血鬼の事だ。そりゃあ気に入るわけだ」
魔王軍のことをオスクロルの次に把握しているベルセルクは、珠希の推測を聞いてあり得ると判断した。
「珠希様の魔眼は一体どの様なものなのですか?定例会議中でも蒼く輝いていたような気がするのですが……」
「俺は『知恵の魔眼』と名付けている。俺が知りたいと思った情報なら過去から現在まで遡れるようになっている」
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