第3話

レトルトの麻婆豆腐も美味しいが家で作れるなら作るにこす。

麻婆はコチュジャンと豆板醤が必須だが、僕はコチュジャンの代わりに味噌を使っている。

まず、下ごしらえの為茄子を油で炒めておく。熱した中華鍋にニンニク、生姜を炒め香りが出たら豚挽肉の代わりに豚コマをぶつ切りにした物を炒める。

火が通ったら、調味料と片栗粉を入れる。トロミがでたら茄子とネギをいれ風味づけに胡麻油をひと回し入れる。


いい香りがしてきた。これをご飯に乗っけて食べるのが美味いのだ……


じゃない!

いけない現実逃避をしてたよ……。

僕は後ろを振り返り、ダイニングテーブルで必死に夕飯のサラダ用だった胡瓜を齧っている河童に声をかける。


「で、僕にどうして欲しい訳?」

「あぁ、すみません!歩き疲れていたので胡瓜で満たされてました。」

だろうな、口の周り胡瓜のカスだらけだし、テーブルにも散乱している。


「別に、僕も夕飯作る時間欲しかったからいいけど。」

僕は布巾を手に向かい合って座る。


「是非とも君に助けて頂きたい事があるのです。

近くの神社に妖力を持った殺生石という石があるのです。それを壊していただきたく。」

「せっしょうせき?石を壊す事くらいなら君達にもできるだろう?」

「私も知りませんが、ただの石ではないのです……。お札が貼られており私達妖には触れる事が出来ないのです。強い霊力を君から感じたので札を剥がし、壊す事ができると思い頼みました。その石を破壊しない限りじわじわと周りに影響を及ぼすのです。」

いくら霊力を持っているからといって、しがない学生の僕には何もできない筈だ。


「その、殺生石というものは危険を持ってるから札が貼られてるんだろう?そんな物を剥がして大丈夫なのか?」

「一刻も早く破壊していただかない限り、もしかすると人間にも影響を及ぼすかもしれません!」

「危ない事を僕に頼むなよ。他にも適任がいるんじゃないか?」

「霊力を持つものを探し回ってやっと君に辿り着いたんですよ!

壊さない限りじわじわと周りを蝕んでいくでしょう。」

河童は身を乗り出して言ってくる。

話を聞いたからには後には引けない雰囲気だ。


「はぁ、わかったよ。壊すだけだからな。それ以降関わらないでくれ。」


などと請け負った結果

現在深夜なのに神社にいる訳だ。

この出来事が僕の人生を変えると知らずに。

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