第2話

今まで視て見ぬ振りで過ごしていたのにどうして今頃になって関わってしまったのかは理由がある。


僕、柊木蒼(ひいらぎ あおい)には両親がいない。

小学生の頃交通事故に遭い亡くなったらしい。

その当時の記憶は朧げなので全くと言って覚えていないが……

今は叔父との2人暮らしである。

叔父が家事全般はてんでダメなので僕が基本的こなす様になっている。


学校の帰り道いつもの様にモノレールを降り改札を出て、誘惑に駆られそうになるパン屋を通り過ぎ商店街に入る。


今日の夕飯は麻婆茄子と決めたので茄子を買おうと行きつけの八百屋に行ったら出会ったのだ。


胡瓜を見つめている河童を……

(やっぱり河童って胡瓜を食べるのか?)


などと思いながら、八百屋の真理子(まりこ)さんに声をかける。


「真理子さんこんにちは。」

「あら、蒼くん。今日の夕飯は何かな?」

「麻婆茄子にする予定です。」

ふくよかで笑顔が素敵な優しげのあるおばさんだ。おばさんって言うと般若の顔になるから間違ってもおばさんと言わない様にしないといけないけど。


「麻婆茄子ね、なら茄子と……、サラダに胡瓜はどう?」

「……いただきます。」

タイミングが悪い。何故今日に限って勧めてくるのだ。

河童の視線が痛いがこの場から逃げる為に早く会計を済ませ帰ろうとし河童を避けようとした


のがいけなかった。

視えない人には避ける必要がない迂回の仕方だった。


視えないからといって存在してないというのではないから触る事も出来るし、会話をする事もできる。


僕は視えるから避けて通ろうとするのがいけなかった。しかも胡瓜を買ってしまったからなのか見られていた。

もちろんのこと目が合う。


「君、私の事が見えるのかい⁈」

ほら声をかけてきた。

僕は無視を決めてその場を早足で去ろうとする。


「視えてるのならお願いだ!助けて欲しいんだ!」

商店街を出てもついてくる。

どこまでついてくる気だ。

家までか!


「助けてくれ、お願いだ……誰かの力が必要なんだ……!」

「僕には関係ないんだけど。」

しつこく付き纏ってくるので立ち止まる。

周りには人の目がある。

ちょうど帰宅時間なので人通りも多い、このままじゃ家までついてくるだろうと考える。


「兎に角、話を聞くまで付き纏ってきそうだから僕の家に来れば。」


あぁ、関わっちゃったな。

時を戻せるなら戻したい。出来れば今日の献立を決める時に。

わざわざ買いに来なくとも冷蔵庫を見てから献立を決めるんだった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る