第30話 霊獣《フゥハーペト》
アヤの悲鳴を聞いて井出は反射的に居間に移動する。居間で仮眠していたエマや真由美、七海が
「アヤ君、無事か? 怪我は無いか?」
井出が居間に飛び込んだ時、アヤは縁側に仰向けに倒れていた。彼女のお腹の上に何か黄色い生物が居る。彼は反射的に腰の
「なんや、もービックリしたわー。自分どないしたん、急に・・・。お
「わ!可愛い! 何て言う動物かな? 尻尾がもふもふだよ!」
上半身だけ起き上がったアヤにその動物はしがみ付いている。ピートはアヤの左手に
「ほら、リンゴですよ~♪ 美味しいですか~?」
井出と良く動物図鑑を見ていることが多い真由美も同じ意見のようだ。キッチンから小さく切ったリンゴを皿に乗せて持ってくると一つずつ手渡していく。その動物は片手で受け取ると美味しそうにリンゴを食べる。余程お腹が空いていたのだろう。
「あらあら、『
アヤの悲鳴を聞いて駆けつけて来たラヴィニアが息を
「あの、ラヴィー・マム。今日こそは言おうと思います。自分は、この動物が『狐』と呼ばれるのは納得が行かないのですが・・・。」
「うーん。私も『虎』とか『狐』とか『鷹』とか『燕』って古代エルフ語で知ってるだけなのよ。何か動物の名前なのよね。どんな動物なのかしら?」
井出がラヴィニアに問いかけようとすると逆に質問されてしまった。そこに動物図鑑を持った真由美が現れる。あるページを開いてラビィニアの前に差し出した。
「あらあ、本当ね。この『レッサーパンダ』って動物、『
そのページには
「ラヴィー・マム、『狐』はこういう動物です。ちなみに『コヨーテ』はこれです。」
「まあ、確かに『
真由美が次の
「これが私たちの世界での『ハイエナ』です。」
「まあ! この動物って『
「あと『
「あら『鷹』って精悍な顔してるのね。『燕』は可愛らしくて素早そう。
「最後に、これが『虎』です。」
「ふうん、体の柄が『
やっと判って貰えたようだ。井出と真由美は胸を
「でも、この動物は『
彼女は、そう言って立ち去ろうとしたが何かを思い出したように振り返った。
「あ、そうそう。その子も一応、『
ラヴィニアはそのまま
「はい、皆さん。名前の候補は在りますか?」
井出の問いにアヤと真由美が案をだす。七海とエマは任せると言って事態を見守っていた。
「はーい、ウチは『バース』が良いと思います!」
「えー、アヤ君。『ランディ・バース』って今年来た外人枠の選手だよな? どうせならミスター
「え~!
議論が白熱してきた。アヤが井出に得意げに語り出す。
「そっかー。井出っちは1985年に起こる『奇跡』を知らんから、そんなん言うんやね。」
「なんだ、その『奇跡』って・・・。まさか優勝するのか
「そうやで! しかも日本一にもなるんや。その原動力の一人がランディ・バース選手やねん。ものごっつい偉業を一杯達成するんよ、この人。」
「ねえ、じゃあ『ラン』は? せめて女の子っぽい名前にしてあげようよ。」
真由美が食い下がる。動物の事となると内気な彼女も引き下がらないようだ。
「ゴメン、マミたん。その名前はウチの妹で
「そうか! なら本人に決めさせよう。皆でアイツを好きな名前で呼んでみようじゃないか!」
「おーい!『マサユキ』こっち来い。美味しい果物あげるぞ!」
井出が声を掛ける。だが、その『
「ねえねえ、『ラム』ちゃん、こっち来ない? 美味しいもの沢山あるよ?」
真由美が優しく語りかける。その『
「こりゃ! 『バース』こっちゃ来い!
アヤがそう呼んだ瞬間、その『
「バース! おいで!」
アヤの一言で、その『
「判りました。今後、この子は『バース』と言うことで・・・。」
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