第27話 「もふもふ」の来訪者
「動く城」
「よう、
現場監督のドワーフが井出に次の指示を
(ダメだな。ついつい考え込んでしまう。しかし・・・。)
井出は三日前、
井出と真由美は同じ1983年の日本から転移してきた。しかし元の日本では二人は
「あ、あの、井出さん。そろそろお昼ご飯ですよ。駐在所まで戻って下さい。」
不意に横から真由美の声がした。井出が声の方を向いた時には彼女はもう後ろを向いていて、駐在所に向かって歩き出している。ちょっと急ぎ足だ。ああ、初めて会った頃の真由美ちゃんを思い出すな。あそこから慣れてくれるまで結構な時間が掛かったんだよな、と井出は肩を落としながら歩き出した。
「はい、ピート。あ~んして。うん、えらいね。」
駐在所の居間で、エマがピートにスプーンでエビピラフを食べさせていた。美味しそうに顔を
その中での時間は井出と真由美が転移して来た元の世界、1983年だ。1日が30時間の
井出は大盛のエビピラフを食べ始める。真由美はコタツの反対側に座っていた。スプーンでピラフをチマチマとかき回したりして、時々チラッと彼の方を見ると直ぐに下を見る。この三日は
「井出っちとマミたん、どしたん。夫婦
アヤが突然、二人を
「アハハ、アヤから聞いたわよ。二人は元の世界で結婚してたんですって? お似合いじゃない。」
エマが
「俺と真由美ちゃんは6歳も年が違うんだよ? 仮に俺が良くても、そんな年が離れた男性、彼女はどうだろ?」
「あら? 私のパパとママも
「そうだね。私もクラスの男子とか子供っぽいから全然無理。やっぱ、ある程度は年上が良いよね。9歳くらい上でも良いよ。」
「あ~、ウチの弟の
「あー! アヤっち、心の古傷
なるほど。男性に比べて、女性は年上に対する
「ふむ、コーイチは24歳よね。皆の年齢に直したら私も同じ18歳だし、私達も結構良い年の差だと思わない?」
エマの突然の発言に井出と三人の女子高生たちが
「えっと、エマさんって私と同い年だったの? ウソ、見えない。」
「そんな大人の色気ムンムンで、私らと一緒? やっぱり肉が主食やと違うんやね・・・。」
「・・・。」
「エマってしっかりしてるから、俺よりちょっと年下
七海とアヤが驚きの声をあげる。真由美は目を見開いて口に手を当てる。声も出ないほど驚いたようだ。井出も素直な感想を
「あ、コーイチ
エマがぷぅっと
「よお、井出君か? そろそろ、こっちから隊商を出したいので丘の監視と結果報告を頼む。ところで聞いたぞ、向こうの世界では真由美さんと結婚してたんだって?
「ええ、エマは優秀な
井出は受話器を置くとエマに声を掛けた。事務所のロッカーを開けてスペンサー
「居るな。エマ、
「了解。コーイチ、獲物の大体の位置を教えて。」
井出は丘の中腹より少し上辺りを指差してゆく。エマはその辺りを軽く見た後にスペンサー
「
エマは目を
「右に50cmほど外れた。修正
「了解!」
目を
スペンサー
「
彼女は、この「
「命中! これで3頭目だ。
井出が
「キャー! やったわ。とうとう
「おお! エマ、おめでとう!」
3頭の被害を出した
「ううむ! これがヒウムの科学技術か、 素晴らしいものだな!」
「この便器の品質も素晴らしい。これは
「本当ね。トイレだけを見てもヒウムの世界の『生活を便利にする情熱』には目を見張るわね。」
居間に来ると何やらラヴィニアやドワーフの職人、ホルビーの研究者たちがワイワイと
「皆さん、どうしました? ラヴィー・マムまでお
井出が声を掛けると一同は一斉に振り返った。皆、口々に賞賛する。「ウォシュレット」をだ。真由美の母方の祖父が新潟で事業をしている資産家で、家電でもなんでも新製品をどんどん送り付けて来たそうだ。この「ウォシュレット」も、その中の一つである。
「座っているだけで、お尻を暖かい水で洗ってくれるなんて機能を良く実現したものね。本当に感心しちゃう。誰がこんな素晴らしい思い付きをしたのかしら?」
「どうも、これは『
「この白い石で出来たような蓋や便座の軽さはどうだ。一体何で出来ているんだ?」
皆、井出に教えて、教えてと大変だ。彼も「ウォシュレット」の技術者では無い。当然、手一杯になる。
「井出さん、井出さん! ワン子さんとウサ子さんが事務所に訪ねて来ました。『もふもふ』なんです。早く来て下さい! 早く!」
声の方を見ると真由美がウキウキした表情で立っている。
「すごい! この耳も尻尾も本物だよ。コスプレじゃないんだ! 写真
「あ、マミたん、
真由美がピートを抱っこしたアヤに駆け寄る。見れば三人の女子高生たちが二人の少女と一緒にスマホで写真撮影をしていた。「自撮り棒」という器具を使ってだ。二人の少女は井出に気付くと女子高生たちに
「こんにちわん! 午後一番で西からの隊商に乗って来たコリア・フィクスなのですわん。」
「同じく、カーニィ・カウニスだぴょん。従業員用の宿舎が出来たって聞いたから来たぴょん!」
そこには犬耳ともふもふで長い尻尾の有る賢そうな少女と、長い耳ともふもふの丸い尻尾を持つ美しい赤い瞳の少女が立っていた。
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