第26話 38年間の絆
ピートを抱っこした保安官テッドの妻、ヴァイモはアヤと七海の二人同時の叫び声に驚いた。
「きゃっ! あらあら、どうしたのかしら、二人とも・・・。」
驚いたせいでずれてしまった大きな丸眼鏡を直しながら、彼女はまずアヤの顔をじっと見つめた。
「ふうん、髪の色は違うけど、本当に私の若い頃にそっくりなのね。主人から
そして七海の方を見て不思議そうにヴァイモが問いかける。
「ええと、七海さんだったわね。 『アイちゃん先生』って誰なのかしら? そんなに私に似てるの?」
彼女の問いに七海は自分のスマホを取り出して写真を表示させると、それを皆に見せた。
「あらあら、本当ね。この人も髪の色や型は違うけど私にそっくりね。ところでもう一人、中々良い男が写ってるけど七海さんの恋人かしら?」
「あ、
ヴァイモが
その女性を
「あれ? あれ? なー、
今度はアヤがスマホの写真を
「え? 斎藤だよ。あ、結婚してるから旦那さんの苗字か。旧姓はね、
「これ見て! これ見て! この写真にウチの家族、皆写ってんねん。この間の夏休みに
その写真には七人の人物が写っていた。まずアヤの両親。確かに母親はヴァイモそっくりだ。次に四人の女性や少女たち、そして小学生らしい
「ふむふむ、確かにヴァイモさんが若ければ、アイさんにそっくりだね。なあ、アヤ君。どうしてお姉さんと合流してから一緒に転移して来なかったんだい?」
場にそぐわない不謹慎な冗談を言う井出のお尻に激痛が走る。誰かが思い切り
「うあ!
彼は
「あ、ホントだ。髪の色も一緒だし。アイちゃん先生が若ければこんな感じだよね。ところでこの男の子の名前ってやっぱり『幸司』君?」
「せやで~。
「お、今年のドラフトで
アヤが自慢げに答えると井出も反応した。しかし七海は少し複雑な顔をした。
「あれ?
井出の突っ込みに、今度はアヤが表情を曇らせる。
「ん? あ、それなー。まあ、ウチの家族にも色々あるねん。
「あ、あの今、確認しなきゃならないのはアヤっちのお姉さんの『アイさん』と、七海さんの知ってる『アイちゃん先生』が同一人物かどうかじゃないかな?」
真由美が会話の論点のずれを指摘する。
「ぐらまー! ぐらまー!」
「もう、ピートったら・・・。ちゃんと『グランマ』って言わなきゃダメでしょ? まあ、まだ『お祖母ちゃん』て呼ばれても、素直に喜べないんだけどね。」
井出たちの会話を
「ご挨拶の途中で申し訳在りませんでした。これから宜しくお願いします。ヴァイモさん。」
井出と三人の女子高生たちが保安官テッドと妻のヴァイモにお辞儀する。二人はピートを連れて、手を振りながら去って行った。残った四人は会話を続けるべく駐在所の居間に移動する。
「まず最終確認だ。七海君が知ってる『アイちゃん先生』とアヤ君のお姉さんである『アイさん』の特徴を突き合わせてみよう。アヤ君、お姉さんの好きなものは?」
井出の問いにアヤはあっけらかんとして答えた。まるで犬が散歩に行くのは当然でしょと言わんばかりに。
「そんなん、決まってるわ。アニメと漫画よ。あと『ラノベ』って言うの? あんなんも、よー読んでるよ。」
「あー! アイちゃん先生、『アニメ・漫画研究部』の顧問だよ!」
「なーなー、何で
「え! ち、違うよ。高一の時にちょっとお世話になってね。それが
アヤの問いに七海は少し赤くなりながら答える。写真での二人はちょっと良い雰囲気で写っていたのは確かだ。
「
「ちょっと待ってー! 今、『
今度はアヤがシールベタベタの手帳を開いて見せる。さっき聞いたがこれは「プリ帳」と言う物らしい。
「あ、
七海はスマホを操作して固まった。ゆっくりと彼女が見せたスマホの写真には結婚式場のご
「あのね、この時ね。新郎と新婦のお父さん同士が同い年だって
「井出っち、1959年生まれやんね。ウチのお父さんもそうなんよ。ほんでな、この『浩美』って子は、アイ姉ちゃんが一年前にストーカーに狙われてな。その時に助けてくれた警察の人の子やねん。」
アヤが
「この『
彼女のプリ帳に貼られているプリクラに写る「
「ちょっとこれ見て下さい。」
七海が結婚式の写真をチェックしている途中に手を止めた。彼女がスマホを皆に見せる。そこには抱き合う老人の写真や、新郎新婦の家族席の写真が映し出されていた。老人の一人は井出に良く似ている。そして家族席の写真にはアヤの家族写真の人物たちの成長した姿、真由美らしき上品な老婦人が写っている。
「・・・。決定的だな。俺たちは元居た世界で互いに関りがあったんだ。」
もう反論出来る者は居なかった。元居た世界で、四人はアヤの姉、アイと言う女性を軸に
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