第20話 黒き巨人との死闘
「お願い、三人ともしっかりして! あなた達にも手伝って欲しいの!」
ラヴィニアが駐在所の事務所で固まって震えている三人の女子高生に声を掛ける。彼女の声に最初に反応したのは七海だった。
「鉄砲とか撃ったことないですけど、私でも出来ますか?」
「冗談じゃないわ! 鉛玉なんて『
三人の少女たちも
「ゴン! ゴォン!」「ザカザカザカッ!」
三人の女子高生たちが事務所から出ると黒い巨人が「
「防御結界」の攻撃を受けている箇所から淡く光る
「あんなに一点を狙われたら長くは持たないわね。浩一クン、ちょっと来て!」
小学校の
「拳銃の弾を抜いて渡して。
井出が
「
弾丸が青白く光り出す。井出はそれを
ラヴィニアの指示で、彼女と七海、エマとアヤ、リンネ中尉と真由美が組になって手を
「
真由美はスラスラと、七海は
「リンネ中尉は辺りを明るく照らして頂戴! エマは浩一クンの『筋力向上』と『防御力向上』をお願い! 私は『俊敏性向上』と『身体強化』を受け持つわ。」
黒き巨人の攻撃は激しさを増している。緑に光るひび割れがどんどん大きくなって、攻撃を受ける度に「防御結界」の
「バリイィィーン!」
まるで光子力研究所のバリアが破られる時のような音が草原に響いた。見ると「防御結界」にガラス窓が破られたような穴が開いている。巨人は結界に空いた穴に手を掛けてバリバリと拡げ始めた。とうとう結界に自身が通れる程の「入り口」を確保する。
黒い巨人は「防御結界」内に入ると駐在所を目指してゆっくりした歩調で歩き出した。だが
リンネ中尉の両掌から白く眩い光を放つ球体が数個飛び出した。それらは円を描きながら空中に舞い上がってゆく。途端に辺りは照明で照らされた
「うおお! 何だ? 体が軽い! それに力が
井出の体や盾、ヘルメット、防護装備や出動靴が赤や青、黄色の淡い光で包まれてゆく。途端に体に羽根が生えたように動きが軽快になる。体中から力が
「浩一クン、出来るだけ内側から二番目の
井出はラヴィニアの指示に従い言われた場所の手前まで移動する。歩いているのに40m程の距離を十歩も掛からない。目の前には黒き巨人が間近まで迫っていた。
「さあて皆を守るか! 俺がやらねば誰がやる!」
もう井出に迷いは無かった。今の自分ならあの「
「ブンッ!」
黒いヤツが左の拳を放つ。やや大振りのストレート、井出はこれをパンチの軌道の外に
「ガキィッ!」
軽く打っただけなのに巨人の黒い腕に小さいが
打った
「ザザザッ! ザカザカザカッ!」
不意に上から巨大な爪が付いた細長い腕の素早い連続攻撃が降り注いだ。ステップを踏んで
「なるほど! こっちの攻撃は通るけど、向こうのは無効か。これならイケる!」
「浩一クン、『管理者保護システム』にも限界があるわ。出来る限り攻撃は
なんだ、完全無敵じゃあないのか・・・。井出は少しガッカリした。数m下がると細長い腕の連続攻撃は止んだ。しかし下がった距離を黒い巨人は確実に詰めて来る。これを繰り返していては
「浩一クン、拳銃で
井出はジャイアントロボになった気分で腰のホルスターから
「ビキビキビキッ! ビキビキビキィッ!」
銃弾が命中した
拳銃をしまうと警杖を拾って細長い腕の射程範囲の大外を回り込む。黒き巨人の背後に回ると驚きの光景が待っていた。大きな甲羅のようなものを背負っている。甲羅の上部から細長い腕が生えている。中央部からは二対の触手が生えており、それで巨人に抱きついてるようだ。
細長い腕の連続攻撃が来ない。どうやら背中は死角のようだ。井出は飛び上がって
「ブゥゥーン!」
巨人が右腕の
「ザザザッ! ザザッ! ザザザザッ!」
今度は巨大な爪が付いた細長い腕の連続攻撃が繰り出される。まるで
「ガガガッ! ガガンッ! ガガ!」
盾の表面に黄色い防御エフェクトの光が弾ける。反動で後ろに体が下がる。井出は細長い腕の射程の外に押し出されてしまった。機械的でゆっくりした重い攻撃と生物的で
(やはり、あの細い腕の素早い攻撃が
井出は巨人と駐在所の間に移動しながら考える。
「ガン! ガキン! ガキィッ!」
突然、黒い巨人が自身の左脚を殴り出した。いや脚に着いた氷塊を殴っているのだ。膝関節の
井出は
「ビキビキ・・・。ガシャアン!」
なんと黒い巨人の左の細長い腕が氷結して砕け散ったのだ。体の重量バランスが変わったので巨人が少しふらついた。ここには
しかし、この一瞬が
「ガアンッ!」
コンパクトに打ち込んで来たとは言え、こちらの腕の攻撃は重い。防御エフェクトの黄色いフラッシュ光が辺りを派手に明るく照らす。彼は反動で後ろに吹っ飛ばされて尻餅をつく。
「しまった! 畜生、しくじった!」
思わず叫ぶ井出に黒き巨人が迫る。彼が立ち上がって下がる前に逃がすまいと右の拳を上から叩きつけて来た。
「グワアァァーン!」
まるで空中で大型爆弾が破裂したような大音響が響く。辺り一帯を黄色い光が塗り潰す。黒い巨人が次々と拳を繰り出して来る度に派手な防御エフェクト光が盾の表面で弾ける。攻撃を受ける度に「管理者保護システム」の
「ぐわあぁっ!」
突然、黒い巨人の攻撃が重くなった。いや、そう思ったのは井出の勘違いだ。「管理者保護システム」がダウンしてしまったのだ。もう防御エフェクト光は発生しない。盾や井出の体に掛けられた魔法はまだ
「いだあぁ~い!」
今度は井出の両腕と肩に激痛が走る。どうやら盾に掛かっていた防御力向上の魔法が切れたようだ。ジュラルミン製の盾がぐにゃりと
(どうやら年貢の納め時かな・・・?)
そう井出が思った時だった。銀色に光る巨大な物体が視界に飛び込んで来たのは。
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