第19話 「外敵《バフィゴイター》」
井出はコーヒーを
井出は硬直した思考を
「は、ははは。今、何か冗談みたいなものが聞えたような気がするのですが・・・?」
「ヒドイ! 冗談なんかじゃないわよ! 私は絶対に浩一クンの赤ちゃんを産みたいの!」
もう一回言った! これは夢だ。多分、悪い夢なんだ。やっと
「そ、それでは今日のところは一旦、駐在所に戻ろうと・・・。」
井出と真由美、七海が席を立つ。
「ねえ、浩一クンはどう思ってるの? お返事して
彼女が井出を見上げながら問いかけて来る。近い、近~い! 決して大きくはないが綺麗な形の胸が彼のお腹に当たりそうだ。大きく開いたドレスの胸元から透き通るような白い胸の谷間がすぐそこに見える。なんだか凄く良い匂いもして来た。
「あ、あの、ボ、ボクたち、もっとお互いを良く知り合うべきだと・・・。」
「ちょっと井出さん? しっかりして! 何か
ガクガクと硬直して
「母さん、いい加減にしなよ! その人、困ってるじゃないか!」
短めに切り揃えられた
良く見ると銀髪の少年の後ろからラビィニアにそっくりの少女が頬を少し赤くしてこっちを見ている。好奇心の強そうな瞳、耳の長さもそっくりだ。
「あら! 二人とも、丁度良いわ。こちら、井出 浩一
ラヴィニアが何事も無かったように二人に挨拶を
「
少年はそう言って片目を
「なあに? マー君たら引っ掛かる言い方して。もう! 反抗期なの~?」
「それとも『言っても判らない人』の方が良かったですか? それと僕はもう
80年も一緒に居れば、
「リーニァ・アンダーソンです。
しかし本当にそろそろ駐在所に向かわないと日が暮れる前に帰れない。そう思って井出が切り出そうとした時だった。
「ラビィー・マム、『
ラヴィニアと保安官テッドが緊張した面持ちで目を見合わす。銀髪の少女が身を竦める。マークだけはニヤリと不敵に笑うのに井出は気付いた。
「そんな! 予想だと、あと二週間は掛かると思ったのに!」
ラヴィニアが
「エマ? 状況を知らせて?」
「ラビィー・マム、規模は『
「アレに似ている? まさか・・・。」
ラヴィニアの表情が
「駐在所に行くわよ! テッド君、人を集めて
井出たちが
「リンネ中尉、あなたが護衛に就いてくれるのね? 心強いわ。」
ラビィニアが彼女に声を掛けるとリンネ中尉が敬礼をしながら三人に挨拶する。
「
ほっそりとした体形だが胸と腰にボリュームがあり全体に丸みが有る。
「リンネ中尉、宜しくお願いします。井出 浩一巡査長です。」
彼は中尉の
仕方なく残りの三人には後部座席に乗って貰った。ラヴィニアは七海のスマホで駐在所のエマと連絡を取り続けている。全員が乗り込んだのを確認した井出はパトカーを発進させた。徐行で西門の前まで進む。すぐ側を「馬」に乗ったジェフが西門に先行するために駆けてゆく。
「マークは出られそう? 場合によっては、あの子の力が必要だわ。」
「出来るだけ急がせます。この白い車の方が速い。先行して下さい。私とジェフは後からライフル隊を連れて合流します。」
西門が開くのを待つ間も保安官テッドとラヴィニアは
「急いで、浩一クン。『
「了解しました。皆さん、飛ばしますので舌を
ラヴィニアの
1速、2速、3速と全開まで引っ張る。丘の頂上に差し掛かる頃には速度計の針が時速80Kmに達した。軽くジャンプしながら丘の頂上の台地に着地する。ギヤを4速に入れアクセルを
「ラヴィニアさんとリンネ中尉の入場を許可します!」
丘の西側、
「さあ、やるわよ。リンネ中尉!」「
丘を駆け下りた
「うへぇっ、何だこりゃ! 気色悪いな。」
パトカーから降りた井出は眼前の光景に思わず叫ぶ。駐在所の南、100m以上先に赤黒い体長1.5mくらいのムカデのような生物の群れが居た。「防御結界」に
良く見るとその後ろ50mくらいのところに直径10mくらいの巨大な生物がいる。粘着質に光る紫色のイソギンチャクのような体、その上には丸く大きな口腔がありその縁にそって黄土色の触手が上に向いて一杯
その紫色のタコギンチャクの周りに5~6体のウミウシみたいな生物が取り囲んでいる。体長は4mくらいか? 頭に2本の長い触手状のものが生えている。こいつらは1体ずつ違う体色をしていた。テカテカと光る体表は、青地に黄色い斑点とか、ピンクと緑のストライプ柄とか黄土色とクリーム色の
井出が隣を見ると真由美が死んだ魚のような目をして
「浩一クン、駐在所には
「あ、盾はありますね。あと鎧は無いですが似たような装備はあります。」
ラヴィニアの問いに井出が答える。彼が言っているのは機動隊の防護装備のことだ。
「じゃあ、一応着て置いて。何が起こるか判らないから!」
「了解です。じゃあ二人とも事務所に行こう。」
彼女の指示に井出は素直に従った。あんな得体の知れない生物の相手をするのだ。
事務所の中では床にぺたりと座り込んだアヤがピートを抱きしめて震えていた。ピートもアヤにしがみ付いて震えている。それを見た真由美と七海も近付いていくとぺたりと床に座り込む。そのまま四人はお互いに抱きつきながら丸くなった。
井出はその光景を見守りながら、そっとロッカーを開けて防護装備を着込んで行った。
「
ラビィニアとリンネ中尉が右腕を前に突き出し
なるほど、ちょっと
「エマ、この調子じゃあ俺たちの出番は無さそうだね?」
「それはどうかしら? 油断は禁物よ。集中して。」
彼女は井出の問いかけに緊張した面持ちで答えた。彼は戦況を確認しようと前を見る。どうやらラヴィニアとリンネ中尉は仕上げに入るところのようだ。二人は手を
「
詠唱が終わると同時に二人は「
「案の定ね、アイツだけには
ラビィニアが
彼女の見る方向には黒い巨人が居た。体高は5m近い。全体的にカクカクした印象を受ける。角ばった胴体の上に頭のような四角い物体が固定されていて目に当たる部分だけが微かに光っていた。脚はあまり長くない。腕は太く長くて重機のような印象だ。肩に当たる部分から生えてる細長い腕だけが違和感を放っている。
ソイツは駐在所を目指して真っ直ぐ歩き出した。ゆっくりだが確実に「防御結界」に近付いてくる。ラビィニアとリンネ中尉が再度、
「やっぱりか・・・。こうなったら仕方が無いわ。浩一クン、貴方に戦ってもらうわよ!」
「え、俺がですか? 一人で?」
驚いて自分を指差す井出をラヴィニア、リンネ中尉、エマの三人が見つめて同時にゆっくり
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