第18話 ホットライン
井出はこの町の「
「ふうん、これが電話? マービンから聞いてたのと
ラヴィニアが感心したように黒電話に見入っていた。前回、転移してきたアメリカ人たちも電話は知っていた。しかし当時の物は電話番号ではなく交換手に相手先に
「は~い! もしもし、こちら
呼び出し音が鳴って、すぐに受話器が取り上げられた。アヤの元気な声が受話器から聞こえる。通話の品質も悪くない。やはり「黒い建造物」はお互いに
「・・・・・・・。」
「あんな~、何回ダイヤルしても掛かれへんねん。電話番号書いたメモ見ながらやから間違えてへんと思うんやけど・・・。」
やはり電話機自体に電話番号がないため
「交換手、『
「ジリリリン! ジリリリン!」
スマホからエマの声が聞こえて来ると同時に黒電話の呼び出し鈴が鳴り出した。今度はこちら側から駐在所に交換手方式で架電できるかテストしてみる。一度、切ってから井出は受話器に向かって言う。
「交換手、『
呼び出し音が鳴って、エマが出た。こちらからでも交換手方式で架電出来る。なら
「ねえ、その『
横を見るとラヴィニアが立っていた。少し表情が
「ええ、そうですよ? 自分が付けました。」
「どうして、その名前に?」
ラヴィニアは井出の眼を
「実は俺、『
ラヴィニアは無言だ。怒らせたのだろうか?
「なので、じゃあこっちもエルフ族の付けたかった名前を取ってしまえ!と思いまして、『
「気に入った!
突然、ラヴィニアが井出の肩をバンバン叩き出す。とても晴れやかな表情をしていた。
「まあ『都のエルフ』たちが色々と
次に七海のスマホとアヤの
「うん大丈夫だよ、アヤっち!
声のする方を見ると七海のスマホで真由美がアヤと話している。何か手にゲームウォッチのような物を持っている。
「真由美ちゃん、それ何?」
「あ、コレですか。ポケットベルって言うんですって。送信は出来ないけど、色々なメッセージを受け取れるんですよ! アヤっちに借りたんです。」
彼女はそう説明してくれると腰に下げた猫の顔を
「実験」が終わり、一同は応接室に移動した。そこには既にお茶の用意がしてあった。テーブルの上には井出たちが持参した菓子類や洋酒、缶ビールなどが置かれていた。
「あら! このビスケット、
ラヴィニアは「マリー」を半分に割ってから一口食べてそう言った。保安官テッドも洋酒や缶ビールをグラスに少し注いで味見をしている。
「うむ。この品質なら一級の交易品として扱えるな。問題は量ですな。」
そう言ってラヴィニアにも
「どうでしょうか? あの『電話』の
魚については、こちらの『鳥』を一度捕まえてみるしかないようだ。もしかしたら、「ホルビーの里山」や東海岸の
「それならお安い
「あとエマ保安官補だが、そちらの駐在所に常駐させるよ。その方が助かるだろう?」
井出は三人の女子高生たちに銃を持たせる気はさらさら無かった。なるほど銃の扱いに
「そうですね。これからは丘の監視など、やることも増えますから。彼女は銃の腕も確かです。丘の西側に待ち伏せする
彼は
「う、うむ。その通りだ。あの『電話』があればお互いの町を旅人や隊商が出るタイミングも確認出来るしな。」
案の定だ。井出はホルビー族の兄妹を救出したことで気付いたことがあった。彼らは頂上付近に差し掛かったときに待ち伏せされて襲われたと言っていた。もしかしたら、それは特別に珍しいことでは無く
「そうですね。当駐在所も西から来た旅人や隊商の保護は重要な業務と
「ああ、判った。井出君! もう腹の探り合いは止めよう! 単刀直入に言う。『保安官の町』としては、そちらの駐在所に旅人や隊商を宿泊させたり、整備したりする為の施設を建設させて貰いたいんだ。無論、費用や人足はこちらで持つ。どうだろうか?」
井出は心の中で手を叩いていた。保安官テッドの言ったことを、こちらから要請するのと相手に依頼させるのとでは
「
井出は
「そう言えば真由美さんも何か見せたい物があるとか?」
交渉もほぼ終わり、雑談が始まる間際にラヴィニアが真由美に声を掛けた。彼女が
「あなた、この
真由美が渡したのは「
「この人口増加率のシミュレーション、各
「あ、それは『リンゴちゃん』がやってくれたので。私は考察に
真由美が言っている『リンゴちゃん』とはアメリカ製のパソコンの事だ。そのパソコンにはメーカーのロゴとして一口
「当然、最後に導き出された推測も真由美さんが考えたのよね?」
「はい。戦力の差が8倍以上もありながらエルフ族が開戦に踏み切った
立ち上がったラヴィニアは真由美にツカツカと歩み寄るとガバッと
「あなた、私の弟子にならない? 色々な研究が爆発的に進む筈よ! 今度、一回お泊りに来なさいな。色々な興味深いお話をしましょうよ。」
真由美の報告書はラヴィニアの心の
「アヤさん、真由美さん、恐らく七海さんもきっと凄い才能を持っているはずね。
瞬間、彼の横に居た真由美が紫色をした果実のジュースを気管に詰まらせ真っ赤な顔で
「ラビィー・マム、まだ彼らは
「あら、こういう話だから早くしなきゃダメなんじゃない?」
保安官テッドが井出に
「あ、そうそう。言い忘れてました。自分、本日付けで『
彼は、それだけ言って二人に敬礼する。次の瞬間、ラビィニアと保安官テッドが同時に驚きの声を上げた。
「まあ! あのマービンだって『
「おいおいおい、俺は『
なんだか
「なるほど、あの
「凄い! スゴイ! すごいわ!」
保安官テッドが納得する横でラヴィニアが興奮気味に井出を見つめる。耳がピンピンと立って
「私、決めたわ! 決めちゃった! 私も
今度は井出がコーヒーを
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