第16話 王道を往く者《カレヴァケサラ》
「まずは井出のパラメータを確認したいわ。『詳細を確認する』を押してみて。」
「黒い建造物」の操作パネル、右上のボタンで「言語」を「日本語」に直したエマが井出に促す。彼が突然、「
「うわ! なんだ、コレ! まるでバイクか車のカタログじゃないか!」
パネルに表示される情報を見て井出が驚きの声を上げた。「
と表示された大項目の下に「
例えば、身長、体重、年齢は
(「歩行形態」とか赤ん坊のときは「四足歩行」で、
井出がそんな事を考えていると、横でアヤが操作パネルの真ん前に陣取って例のシールがベタベタ貼ってある手帳の中身と表示されている項目を見比べている。さらには
「ふむふむ。『股下:80cm』と・・・。惜しいなあ、あと2cm欲しかったね。まあ『短足では無い』としとこか~。」
な、「短足では無い」だって? 大きなお世話だ。しかもやたらと身長や体重、年齢の辺りを見比べている。失礼な!
「よしよし、
井出はもう気にしないで問題の項目の確認に入ることにした。「
「井出のは、やはり『
エマが一度、表示を「
なるほど
「やっぱり『
エマが感心したように言う。なんでも「
「ところで『治安維持行動』って? 他にはどんな行動があるんだい?」
井出の質問にエマがちょうど良い例があるからと説明を始めた。
「皆さん、この二つの毛皮の違いが判りますか? 実際に手に取って確認して見て下さい。」
彼女の手には昨日、保安官たちを助けたときに
「こっちの毛皮、なんかクサい~。」とアヤ。ピートも一緒に
「この毛皮はゴワゴワしてます。毛もバサバサ。」と真由美。
「こっちのは
「私は毛皮に関しては
「こちらの綺麗な毛皮からはご駐在様の
エマが出来の悪い方の毛皮を持ち上げて説明する。
「こっちは私とパパが『自衛行動』で
次に綺麗な毛皮を持ち上げて言った。
「こっちは井出が『治安維持行動』で
エマの説明ではこうだ。「自衛行動」は自分の命を守る行動で、その結果得られる「治安維持ポイント」は余り高くない。それに得られた獲物を「黒い建造物」で処理した時の扱いも普通だ。
だが「治安維持行動」つまり他者の命を守ったり、地域の安全を維持する行動は遥かに高い評価を受け、得られる「治安維持ポイント」も多く与えられる。その行動の結果で得られた物を「黒い建造物」で処理した場合は、より上級な処理が行われるらしい。
ここまで話を聞いた皆がハッとした。昨日の夕方、井出とエマが共同で
「私もそう思ってコレで二階のベランダから調べてみたけど、何にも残って無かったわ。夜のうちに『
エマが腰のポーチから取り出した伸縮式の
(あの野郎、今度
井出は固く心に誓うのだった。しかし「
「確かに『
「もしかして
エマの答えに井出が質問を重ねる。
「そうね。実は
「アイツも一応、生態系に必要な『知性のある生物』だから、流血なしで追い払った事が高く評価されたってことか・・・。」
井出は少し考え込んでしまった。彼がじっと黙っているのでエマは表示を「
「あら?
そう言って「日本語」に表示を切り替えた画面の一点を指差した。井出が何の事かとパネルを覗き込む。周囲に居る者も集まって来た。エマが指差す先にはある「
「スキル名:
(「迷い」無く行動か・・・。嫌々やるくらいなら進んでやった方がお得ですよ!ってことなのかな? やっぱり面倒くさいとか思ったらダメなんだろうな。)
井出には少し心当たりがあった。それは彼が持つある「性質」だった。
彼には「店員や係員に間違えられやすい」という「性質」があったのだ。その「性質」は高校を卒業する少し前くらいから発現を始めた。スーパーや家電量販店、ディスカウントストアなどに行くと子供やお年寄り、オバちゃんが
スーパーに行くと小さな子供が菓子売り場の場所を聞いてくる。家電量販店ではオバちゃんが蛍光灯や電池の型番を聞いてくる。ディスカウントストアでは、お
大学時代に会社見学で
最初の頃は自分が店員や係員で無いことを伝えて、一緒に店員たちを探してあげていた。だが、最後には自分で対応出来ることは黙ってやってしまう様になっていた。結局、その方が早いからだ。
警察官になった今では「人を助ける」と言う行為は、まるで息を吸うのと同じレベルで行えるようになっていたのだ。
「ふむ。
「あの『
他の三人の女子高生たちは、特に何も言わなかったが納得という表情をしていた。
そうこうしているうちに「保安官の町」に行かなければならない時間が
「真由美ちゃん、資料の準備お願いね。七海君は持って行く物の用意を手伝ってくれないかな?」
彼は二人の女子高性に指示を出しながら居間の方へ向かって行った。エマはその後姿をじっと見つめながら思っていた。
(「
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