第4話
さあ、悪い盗賊どもを懲らしめに行くか。
「とうっ!」
ダンッ!
「すごい! なんてジャンプ力だ!」
「でかくてマッチョな体なのにあんなに高く飛べるなんて!」
「何者なんでしょう……」
僕が何者かなんて決まっている。それは正義の味方だ! さっき言ったでしょ! 心の中でツッコみを入れてる間に、僕は盗賊どもの目の前に着地した。
「ふっ、待たせたな。お仕置きタイムだ」
流石に殺してしまうのはマズいのでお仕置きと行こうか!
「何が「待たせた」だ! ふざけんな、てめえ! よくも俺様を蹴りやがったな! 人質まで奪いやがって!」
「そもそも何だその馬鹿げた格好は!? 馬鹿にしてんのか!」
「それとも本当に馬鹿なのか! ああ!?」
……ちくしょー! こんな悪党に格好のことで馬鹿にされるなんて! いや、気にしてたまるか! ヒーローたるもの、いろんな批判を受けても挫けないのだ!
「僕はイヌマン! 正義の味方だ! 愛と平和のためにお前たちのような悪党を懲らしめるのだ!」
「はあ!? なんだそりゃ!? マジで頭おかしいんじゃねえか!? 正義の味方だとよ! 馬鹿じゃねえの!?」
「ぎゃはははははは! 全くだぜ! 勇者じゃあるめえし何様だよ!」
「イヌマンって名前からして弱そうじゃねえか! 頭も悪そうだしよお!」
ぐぬぬぬぬぬぬ……! 許さん! もう許さんぞ! 徹底的に懲らしめてくれるわ!
「みんなやっちまおうぜ! この馬鹿ダルマを血祭りにするんだ!」
「「「おう!」」」
敵が一斉に飛び掛かってきた。おそらく、このマッチョなボディーを恐れて数で攻めるつもりなんだろうが相手が悪かったな。好都合だ!
「「「「死ねー!!」」」」
無駄だ!!
「イヌマン・連続パーンチ!!」
ドガガガガガガガガッ!!
「「「「ぎゃああああああ!?」」」」
僕の連続パンチが一斉に襲い掛かった盗賊どもを叩きのめす! 繰り出された拳は一度も外れることはない。更に的確に当たれば痛いところを当てているから効果抜群だ!
「犬なのにパンチ?」
「あれは、痛いね……」
「正義の味方って言ってるけど、えげつないっすね……」
「犬の要素、顔だけなんですけど……」
あれー? 引かれてる? しまった! やり過ぎたか!? 盗賊たちも結構な距離まで飛んでいってしまった。今度からはもっと手加減しよう。
「く、くそっ! なんつうパンチだ! ふざけた格好をしてるが相当な手練れかよ! ちっ、もう容赦しねえぞ!」
んん? 盗賊たちが起き上がったと思ったら、見る見るうちに姿を変えていく。肌が青くなる者や緑になる者、角や尻尾が生えたり鱗が……って、ええ!? ちょっと、まさか!?
「あれは『魔族』だ!」
「盗賊に化けてたんですか!?」
「そんな、こんなところまで魔族の手が……!」
さっき助けた人たちの言う通り、盗賊の正体は魔族だった。
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