第3話
冒険者としての仕事で山の奥で薬草採取をしていた僕、シーロ・ロウは仕事の帰りに山を下っていたところ……
「きゃああああああっ!!」
「ッ!? 悲鳴!?」
女性の悲鳴が聞こえた。この辺りで女性が悲鳴を上げるようなことがあるとすれば、悪い意味しか考えられない。そう思った僕はすぐに変身した。
「変身!!」
変身した僕は人間が決して追いつけないような速さで現場に向かう。待っていてくれ、まだ見ぬか弱い女性、今行く!
現場と思しき場所を確認する前に、僕の耳にこんな内容の会話が聞こえ始めた。五感も強化されているため、集中すれば聞こえてしまうのだ。
「へへへ、人質がいなきゃ何もできねえだろ? こいつの命が惜しくば武器を捨てな」
「くそっ! 卑怯者どもめ!」
「私に構わないで逃げてください! 勇者様!」
「そんなことできない! 俺を導いてくれた君を置いていくなんて!」
「ひひひ、いい女だなあ。じゅるり、久々にいい夜を過ごせそうだぜ」
「「「ぎゃはははははは!」」」
「ひいっ!? いやああああああっ!」
「ああっ、聖女様が!」
「き、貴様ら! 彼女を放せ!」
……相当最低な悪党がいるな。盗賊の類のようだ。しかも、かなりヤバい状況のようだ。まずは人質の救出が優先だ! 女性にくっついてる男の頭に飛び蹴りを食らわせる!
「待てーいっ!!」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
僕の大声にその場にいた全員が反応した。今だ!
「とうっ!」
ドンッ!
「ぐへっ!?」
「きゃあ!?」
ガシッ!
「もう大丈夫!」
「え、ええ?」
「とうっ!」
ダンッ
男に我ながら見事な蹴りを入れ、自由になった彼女を確保。そのまま味方と思われる優しそうな剣士の元に送り届ける。ちょっと距離があるけど僕のジャンプならすぐに届らfれる!
「さあ、味方の元へ帰りなさい」
「え、えと……?」
「聖女様!」
「ミケネ!」
女性は状況に頭が追いつけないみたいだけど、剣士と後に続くおじさんはそうでもないみたいだ。聖女と呼ばれる彼女のそばに駆け寄ってきた。
「良かった、大丈夫かい!?」
「お怪我はありませんか!?」
「も、もしかして、助けてもらったんですか、私?」
「そうだよ! あの、助けてもらいありがとうございいま……す?」
「な、何ですか、あれ……?」
あれぇ? なんかこっち見て顔を引き攣らせてるんですけどー? …………そんな目で見ないでよ! 僕もそんなにかっこいいなんて思ってないから! 犬型ロボットみたいな顔にズボン一着なんてさ!
「君たち、ここは僕に任せて逃げたまえ」
「あ、あの、あなたは一体?」
剣士の人が恐る恐る訊ねてくる。よく見ると僕と同い年ぐらいの人だった。そんな、同年代の人にそんな風に見られながら恐る恐るって! あーもー仕方がない! 気を取り直してビシッとヒーローとして自己紹介しなくては!
「僕は愛と平和を守るために戦う正義の味方! イヌマンだ!!」
「「「イ、イヌマン??」」」
「弱い人々を守るために悪と戦うんだ!! それが僕の使命!! それがこの僕イヌマンだ!!」
よし! 決まった! これだけカッコよくセリフを叫べば、誰がどう見ても間違いなく格好のいいヒーローだ!
(((だ、ダサい……)))
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