第2話

 新しい世界に転生した僕は、主だった『佐藤総司』君と全く変わらない姿の『シーロ・ロウ』という人間になった。女神さまの特別サービスらしいがサービスが良すぎる。これで僕は総司君のことを忘れることはなくなったんだ。これは嬉しい。


 この新しい世界は前の世界程、人間の文明が進んでいない。その代わり、前の世界になかった魔法や超能力というものがある。それらは似て非なる力みたいだが、僕はそれらを上回る特殊能力がある。それは女神さまからもらった『特典』だ。


 特典は様々なものがあるらしいけど、可能な限り当人が望むような力がもらえるようになっているという。そこで僕の場合は、女神さまが直々に僕の夢を叶えられるような力をもらった。……というよりも、その場で作ったらしい。女神ってすごい。


 僕の夢というのは、正義の味方『ヒーロー』になることだ。主の総司君がテレビで見るたびに笑顔で興奮するのを何度も見ているうちに、僕自身もヒーローに憧れるようになったのだ。前の世界では叶わずに死んじゃったけど、総司君を守って死んだから悔いはない。……でも正直、一緒に暮らしていた黒猫の『クロリ』君が死んでしまったことが悲しいな。僕たち二匹は主を残して死んでしまったから、総司君が心配だ。いや、女神さまが「後に前を向いて進んでいく」と言っていたから大丈夫だと信じよう。


 さて、僕の特典、つまり特殊能力は『変身能力』だ。変身すると体全体が強化されて身体能力が高くなり、姿がムキムキの筋骨隆々に変わり、顔も総司君の顔からテレビアニメに出てくるようなロボットじみた犬の顔になる。生前の白い犬を彷彿させるような真っ白な肌は固くて防御力抜群。身につけている服ははだけることはないけど、上半身裸にズボンと長靴だけは恥ずかしい。要約すると、全く別の姿になって圧倒的な戦闘力を身につけるのだ。


 この変身能力は僕の夢をかなえるのにピッタリだ。いかにもヒーローらしい。18歳になり、この世界の基準で成人として認められるようになった僕は、冒険者という仕事に就いた。その傍らで見過ごせない悪や理不尽を見かけたら変身能力を使って変身するのだ。ヒーローとしての使命をこなすために!

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