第2夜

 私は今日も今日とて屋上で星を見ていた


「どうせ星を見るならこれを使ったら?」


 親友が担いでいた荷物をほどいて私の隣に座った


 親友はもう気持ちを切り替えたのか昨日のような悲しい顔ではなかった


(私はまだ切り替えられないのに……)


「……それは?」


「望遠鏡だよ。天文部から借りてきた」


 そう言って親友は望遠鏡を組み立てた


「ほら出来たよ。覗いていいよ」


「ありがとう……」


 私が望遠鏡を覗くとそこは一面星の世界だった


「キレイだな……」


「……そうね」


「……何で……何で……」


 星を見てるとどうしても“彼女”のことを思い出して涙が溢れてくる




『……貴女とはもう顔を会わせたくないの……』


『……何でそんなこと……』


『……もうここに来ないで……』


 “彼女”の目は前髪に隠れて見えなかった




「ほら、ティッシュ」


「……ありがとう……」


 星を見てると悲しくなるけど……星を見ないと落ち着かなくて……“彼女”との繋がりが薄れそうで……


「……うぅ……」


「ねぇ……」


「……なぁに?」


「……私は貴女ほど“彼女”とは仲良くなかったけど……

私も辛いよ……“彼女”が居なくなって……」


 私はハッとして親友を見上げた

 

 親友は涙目だったが強くこちらを見つめていた


 親友もまだ切り替えられてなかった


「だけど……私にはまだ貴女がいる」


 まだ悲しいけど、前へ進もうとしていた


「それで……貴女はどうなの?」

 

 私は大切なものを見落としていた

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