金メダルへの挑戦。

 続く代打イ・ジョン氏。俊足巧打の選手。なんとか出たいんやろな。ジャイロのスライダーでバント2回失敗したあと、ヒッティングに変えてきたがジャイロのSFFで三振。これであと一人。


 最後は一番打者のコ・ヨン氏。長打力もあるからそのまま起用か。明らかに一発狙い。2シームジャイロで2球をカットさせ、遊び球無しのインのSFFジャイロで三振。


 6対4。意外に競った試合になった。干野さんは「真ん中に日の丸を掲げます」とか意気軒高いきけんこう

「監督の采配がズバリ的中しましたね!」とヨイショされ上機嫌。いや、振り回される身にもなってや。采配だけに。


 選手からは俺と椙内さんそして仁志岡さんが呼ばれる。

「韓国の怪物に打ち勝ちましたね?」

という質問。


「戦隊モノと仮面ライダーの国ですからね。ヒーローはヘルメットをかぶって日夜、悪の秘密結社の怪人と戦ってますよ。良い子のみんな!明日は最終回なのでぜひ見てくださいね。」

俺の返しに二人はクスクスと笑っている。仁志岡さんがニヤっとしてから聞く。

「で、誰がレッドなん?」

「そりゃあ野手はニシさんでしょう。投手はダルさんかなぁ。あ、左藤さんはイエロー臭が凄いですよね?」


「カレー(加齢)臭みたいに言うなよ。一応『中堅』なんだからさ。」

「あ、椙さんめっちゃ上手いこと言った。」


「で、健ちゃんはなによ?」

「僕は最後に出てくる巨大ロボですわ。」

「それな。」

「なるほど。大砲も魔球も装備してるからな。」


 ナイトゲームのもう一つの準決勝はキューバが勝ち、初戦で負けた相手にリベンジの機会だ。行くぞ下克上!


 「今日は大活躍というか一人で全部美味しいところを持っていったよね?」

亜美にからかわれる。

「でもランナーがいてくれたからこその5打点で、ランナー無しなら2点で終わり。負けてたもん。やっぱり野球はチームスポーツだよな。」

「また飲んでる?」

「今日はビール1本だけ。明日が飲み納めだけどね。メダルの色で対応が変わるだろうから自重するよ。と言うか亜美もいよいよ明後日からじゃん。頑張ってね。」


 オリンピック最後の試合。代表チームはすぐに解散してリーグ戦を戦うチームにそれぞれ合流。せっかくなのにオリンピックの閉会式も無しか。もっとも、俺の活躍を見た球団は俺にすぐアメリカに戻って来いと連絡してきた。客が呼べそうな選手はすぐにでも使いたいのだろう。


 決勝戦はナイトゲーム。23日、土曜日。そしてその翌日がオリンピックの閉幕。


 こちらがビジターになるので先攻。


 先発はこちらが輪田さん、キューバが抑えのゴンザレス氏を先発に回してきた。またまた左腕対決。キューバ的には逆抑えオープナーということなのだろう。


 そして、俺がついに左翼手4番打者に。アメリカでは3番打者最強説が優位なのでそれほど気にはならないが。これは意気に感じるべきなのだろう。もちろん、最初からこの打順オーダーはくめないだろうが、これだけ本塁打本打ってしまえば誰も文句は言わない。そして、もうここまで来れば体面云々よりは金メダルを持って帰りたいの一心しかない。


 デイゲームの3位決定戦は韓国が勝っていた。さすが、メダルなら兵役義務免除の人参がぶら下がっていただけのことはある。


 球場はほぼ満員。なんでも観客席が1万席くらいしか無いらしい。野球が正式種目から外れるわけか。


 初回から今日2番に入った新木あらきさんが先制のソロ本塁打。俺は二死走者無しから四球。初回は1点止まり。輪田さんは良い滑り出しで三人で斬って取る。


 2回はこちらは無得点だったがキューバにソロ本塁打が出て追いつかれる。それも簡単にニ死とった後。やっぱり金メダルを気にして力んでんのかな。しかも四球二つ与えてピンチ。ただここは新木さんのファインプレーで阻止。今日のヒーローは新木さんだな。


 3回は下位打線からチャンスを作り二死二塁一塁。俺の目の前で青来さんが3ラン本塁打。これは行けるか?




 

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