「卑劣」か「利口」かは文化の違い。
あー、それで向こうの選手はニヤニヤしていたのかぁ。
少し腹立つ。あ、別に「騙し討ち」してきたことに怒っているわけではない。歴史的に南高麗人というのはそう言う「駆け引き」が大好きな民族なのは知っていたので「らしい」なぁとは思ったけどね。
ただ干野監督が球場の備品を蹴り飛ばしそうなほどお怒りで、ベンチ全体が変な雰囲気になっていたのだ。恐らく名古屋ドジャースの監督だったころソンさんという南高麗人投手がいて、しかもかなりの人格者だったそうで、その彼がコーチとして入っていたにもかかわらず「卑劣な」手を使ってきたことに怒っているのかもしれない。もちろん、ルールの範囲内なので「卑劣」ととるか「利口」ととるかは文化の違いだ。
この雰囲気を変えるにはどうしたらいいのやら?そしてアメリカのアカデミーにいた南高麗人学生に聞いていたことを思い出す。南高麗は極端な儒教社会で「年長者」の権威は絶対だそうだ。
せや、ここは「高校生」の俺が一肌脱ぐとしよう。年下の俺がコケにしてやればいいのだ。二死無走者。俺は右打席に入る。俺がスイッチヒッターだと知らなかったのか、投手のチョンさん意外だったのか口を尖らせて何か言ってる。
初球はけっこう厳しめなインコース。メジャーリーガーとかに投げたら完全に睨まれる程度。もっとも南高麗では日本人相手ならどんな酷いことをしても構わないと子どもの頃から教わっているそうなので想定内。
次は外角でしょうね。はい、注文通りのカーブ。バックスクリーンに放り込んで差し上げる。俺は拳を突き上げての「わざとらしい」ガッツポーズ。挑発してみました。あー、なんか怒ってるぽい。
干野監督の満面の笑みが少し怖い。ただ、鳴瀬さんも初回裏に一発を浴び、同じようにガッツポーズを仕返しされた。子どもか。
ただ2回、日本は下位打線からの攻撃で2点を上げて3対1とし、3回再び俺に打順が。一死無走者から再びチョンさんからソロ本塁打。なんかもっと良い
俺は三塁を蹴ってから側転からのバク宙で本塁を踏んだ。これは俺の中の人が昭和の人間だから思い付いたこと。昭和61年の日本シリーズで埼玉ライオンハーツの
俺の「中の人」と年齢が近い
相手チームは俺が「格下」の高校生だと知っているし、その上での煽り。相手はそこで完全に
6回、今度は代わった右投手から左打席で2ランを打って再びバク宙。相手のコーチが口を尖らせながら球審に抗議している。まあルールブックに書いてなければ何やっても良いと先に自分たちの方から仕掛けて来たのをすっかりお忘れのようだ。
これで6対2。8回に1点ずつ取りあって7対3。9回に最後の打席が回ってくる。俺はライトスタンドをバットで指して予告本塁打。これも正直言って品が無い。
なんと予想通り
最後は
俺もヒーローインタビューでなぜバク宙だったのか聞かれ、流石に答えに困る。
「今日はそう言う雰囲気だったんですよ。なのでもうやりません。次はオリンピックで本塁打打ったらやります。」
とお茶を濁しておく。
みんなは別のことでいらだっていた。
「くっそ。
「減った」って行く気満々かよ。
ただ今日はすでに監督が手配していたらしい。奢りかぁ。
「お前たち、今日は無礼講だ!」
という言葉に
「オヤジ!一生ついていきます!」
とか言うくさいセリフと共に夜の街へと繰り出して行った。だーかーらー俺の手を離してくださいよ。俺は今日は(魔)力を目一杯使ったから部屋で大人しく寝ていたいんですよ。
とは言え、この南高麗の「卑劣な」というか「紳士協定違反な」行為は後に1時間前のオーダー交換以降の変更禁止の明文化につながるのである。
と言うか、結局
国際試合でその程度でいちいちキレていたら話にならない。
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