春の甲子園で三連覇を目指してみた。

真面目な先輩が真面目に直面する問題。

 最終戦は地元台湾代表が相手。先発はダルさんことダーヴィッシュさんである。


 個人的には韓国戦で本塁打を量産し過ぎたので抑え気味で行こうというのが目標である。ただ日本のマスコミでは韓国戦でどれだけ活躍してもノーカンらしくそう言う意味では気楽ではある。


 ワイドショーでは試合結果がサラッと紹介されただけで、試合内容はほとんど取り上げられなかったのである。理由は知らねど日韓戦で日本が勝ってしまうとそう言うものらしい。


 だがしかし、初回俺は抑えていたはずだが良いとろに失投してくれたのでウッカリ本塁打を打ってしまう。


 その後は四球を選んでいたのだが6回に台湾の主砲陳さんに2ランを浴びて逆転されため7回は本気を出すことに。俺の2ランを含む6得点で逆転。


 そのあと富士川さん、植原さんと継投、9回にも4点を奪って11対2と圧勝。五輪出場をモノにした。俺は7本塁打で打撃賞とMVPをいただいてしまった。そりゃ三試合で7本塁打は打ち過ぎだわな。次点が2本塁打だしな。


「いや、これは日本のバッテリーが十分機能したからこその勝利で、打撃は所詮『ミズモノ』ですので、今回の結果はただの偶然デキスギです。日本の投手力こそ至高。」

 俺のドヤ顔の「正論」はアッサリと「謙遜」の一言で片付けられてしまった。だって、投手としては出る幕がなかったのは事実だし。


 解説というかジャリーズのSWAPの仲井くんがヂャイアンズのドラ1は沢村に決まったとずっと連呼していて引いた。いくらヂャイアンズファンでも違う系列の局で言ってはいかんでしょ。そして、もしメジャーのドラフトにかかったらごめんね。


 ちなみに祝勝会もキャバクラでした。みんなどれだけ好きやねん。外国だし嫁さん見てないからって羽目外しすぎです。翌日12月4日に帰国。あれ、そういえば前回学校に登校したのって10月末なんで1ヶ月以上登校していないわ。とんだ不良生徒である。


 12月5日、久しぶりに学校に登校。ケントにアジア選手権優勝のメダルを預ける。そして久しぶりに授業を受け、放課後には部室に顔を出した。


「健さんお帰りなさい。」

後輩たちの熱烈歓迎ぶりに少し引く。最近はずっと底辺だったので超久しぶりに上になって気分が良いです。「先輩風」を吹かせますよ。


「授業サボれて羨ましいですよ。」

 天真爛漫な、いやそう装っている自称俺の大ファン、三原俊平みはらしゅんぺいが絡んでくる。テンプレなツッコミですね。でもまるまる勉強を休んでるわけじゃない。俺はカバンからテキストを出して見せる。


「いやいや、ちゃんと課題を渡されてるって。レポートも試合の合間に書いて提出してるよ。」

「へー、真面目か?ですねぇ。」

「そうだよ、真面目だよ。アメリカの学校アカデミーはそう言うの厳しいからな。」

 同系列の学校なので単位が相互に認められており、手さえ抜かなければ後で苦労することがないはずだ。


「健さんまたアメリカに行くんですか?好きですね。」

皮肉か、いやそれとも純粋に感心しているのか。姉妹校なのでウチの学校からはいつでも留学できることになっているのだが、高額な学費・生活費に加え、授業(座学)における日本語サポート無しという障壁の高さゆえに利用者はほとんどいないだけなのだ。


「せやな。もうここまで来たらもう一回くらい行くだろ?」

「もう『毒を食らわば皿まで』になってますよ。」

「おまえ上手いこと言うなぁ。」


 俺的にも借金が大きくなり過ぎて感覚的に麻痺した部分と今回代表で結果を残したので、日本でならドラ1は確実な上、メジャーのドラフトでさえ上位に行けるかもという欲が出てきている。日本のドラフト1位なら契約金だけで1億円は出るはず。契約金が入ればこれまでの借金も余裕のよっちゃんで返済ペイできる。


 そして、アメリカに行きたいもう一つの理由。それはもう一度セドナで霊的パワーをゲットして「白い部屋」に行きたいという願望もある。俺の「無双」をこれからも邪魔するであろう胆沢の中の「魔王のカケラ」をなんとかしたいのだ。


 さて、渡米は正月明けと決めた。その間のやることも決まっている。野球は「試合禁止期間オフシーズン」に入り、プロ入りの先輩たちと自主練の日々だ。先輩たちとは本当にこれにてお別れなので感慨深い。


 そしてもう一つはそう!亜美とのデートじゃ。夏からろくに会ってないんでどうしたものでしょうか?自分で考えろボケ?そうですよね。


 

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