進化していたトルネード。(2回戦)
フォークボールである。
それもかなりの落差がある。トルネード投法で握りがなかなか見えないうえにこんな球を投げられてはたまらない。基本的にストレートとフォークしか投げてこないのだが捕手の好リードもあって、山があたれば打てるがその予測すら外されてしまう。
例外は住居さんだった。いきなりソロ本塁打。フォークとストレートの違いを聞くと
「ストレートがズンでフォークがグンだな。」
という迷回答。ようはボールとバットの衝突「事故」だった模様。ただの偶然じゃねえか。
心の中で毒づく。
「そんなんお前にしかわからん。」
伊波さんもあきれ顔だ。「悪球打ち」の
「『悪球』はボールになる球な、ゾーンに投げ込まれたら打ちづらいわ。」
とやはり使えねーお言葉。
「フォームで見分けがつけばいいんだが、ビデオ撮影なんてできないし、分析している暇もない。とにかくこの1点を守らないとな。」
山鹿さんが半分あきらめている。山鹿さんも速球やチェンジアップなどの緩急の差には強いんだけど。即応するのは難しいようだ。
「何度か定期的に対戦する相手ならなんとかできそうだけど。」
見分ける?鑑定スキルでなんとかならんか。魔法で脳内に動画を残し、脳内で違いを鑑定できないだろうか。異世界では魔物の村や城の偵察をした時に使った手法だ。
「混乱魔法」という
俺は次の打席8球放らせて三振したがデータは集まった。さて、鑑定してみよう。間違い探しを魔法ですると。な……なるほど。
「ストレートよりフォークの時の方がリリースポイントがやや高くなります。指で挟んでる分、指から抜けるようにボールが離れるためストレートの時よりボールが高い所から出てくるように見えるんでしょうね。」
俺の視たてにみなうなずく。信じる信じないよりもやってみるしかないのだ。
7回、そろそろ蒲生さんに疲れが出始めたのもあるが、さすがは天才集団。能登間さんからの4連打を含む打者一巡で5点を挙げ、一気にゲームを決める。8回1死で四球を連発してさらに
試合後、東郷監督は連投疲れの蒲生のフォークボールの精度が落ちたから打てたと説明していた。ま、蒲生さんの弱点はうちのチームだけが知っていればいいのだ。
確かにトルネード投法というダイナミックな投球フォームは体力の消耗が激しい。聞いた記者たちも納得できたことだろう。
今回の勝利には一つの意味がある。それは我が青学がベスト4に進出したこと。つまり翌春の選抜大会、甲子園の出場をほぼ決めたということ。特に俺たち1年にとっては感慨深いものがあった。
まあ、先輩たちにとってはただの通過点にしか過ぎないかもだけど。ずっと補欠で過ごした前世を経験した俺にとっては夢のような出来事であった。
夕食後、宿舎のホテルでささやかな祝賀会が行われた。
「甲子園出場がほぼ決定しました。これは自動的に出場できるというわけではなく、ここで思い上がり、考え違いをして飲酒、喫煙、万引きなどの非行に走れば
今から俺たちは生活全体が野球であると考え、ルールは絶対であることを肝に銘じ、戦っていこう。油断は禁物だ。」
伊波さんが檄を飛ばした。おお、まるで
明日は雨天順延に備えた予備日であるために休日であった。学生であるため調整程度の練習があるだけで、宿舎で学校から出された課題の方をしなければならないのだ。近隣の公立高校のご好意でグラウンドと空き教室を貸してもらった。
準決勝は千葉代表の
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