浮き上がる齟齬。
「なんで俺だけ柔軟なんですか?」
珍しく胆沢が
「
そういえば胆沢は小学生時代から身体が硬い。リトルの頃から
胆沢の態度に鼻白んだのか山鹿さんは苦笑混じりで続ける。
「お前は肩甲骨と股関節の可動域が広がればもっと速い球が投げられる。
「俺の方が二人より球は速いんですけど。」
よほど柔軟が嫌いなのか胆沢の態度は変わらない。山鹿さんはあきれたように言う。
「そらそうだ。まだ二人はさほど筋肉がついていないからな。現時点ではお前の球の方が速いというだけだ。じゃあ試してみるか?」
結局、実証実験ということで俺がマウンドにあがりボックスに胆沢を立たせて球を投げることに。ボールの縫い目を垂直に指をかける4シーム(
同じ腕の振りで投球しても握りで縫い目に添える指の位置とリリースポイントによってボールが受ける空気抵抗が変わり、2シームは遅くなる。つまりチェンジアップという変化球に近くなるのだ。胆沢にとって俺の球は大して速く見えないが、山鹿
呆然とする胆沢に先輩は告げた。
「優秀なお前なら球を見ただけで意味が解っただろ?2シームはホップ気味に見えたはずだ。
胆沢が下を向く。先輩ヤメテ!「
「いいか。俺は投手としては
わかったらさっさと
「うす。」
下を向いたまま胆沢はジムの方へ走っていく。多分陰で泣くなあれは。昔からそうだった。あいつは褒められると増長するから悔しさがバネになるタイプなんだよな。
「
山鹿さんが俺の肩をポンとグラブでたたく。
「あいつは
あんまり俺をダシに使うのをやめてくださいよ。人外の力が発動したらどうするんですか?
「
いや、今のところは2回が限界なんで。
「そうなんだよな。もう少し
はい。ただ、投手の場合、俺の持つMPの総量がこれからも成長していかないと試合全体で魔法を使い続けるのは難しい。体力回復と成長重視のための「自動回復」に重きを置いている今は試合に魔法の
「命中率アップ魔法」は打者としてなら3回か4回まわってくる打席に使えばいいのだが、投手となると毎回使うことになる。身体の消耗も激しいので「自動回復」も最低重ね掛けが必要なのだ。もともとの俺の素質が「一般人」なのだから仕方がない。
しかも屋外でする投球には風の有無や強さ、向きに加えて気温、湿度によるボールへの空気抵抗の強さまで自動計算してくれるこの魔法に頼らざるを得ないのだ。
そして2か月にわたる長い地区予選が始まった。後半は梅雨時に入るため雨天順延が多くて不規則になりやすく
「あれ、ドリンクどうしったけ?」
うーん。家に置いてきたか。しゃーない、スポドリの粉末の予備がねえかな。部室で自分のロッカーを漁っていると後ろから女子が声をかけてきた。
「せーんぱいっ!なにかお捜しですか?」
振り向くとそこには懐かしい顔が。前世でも1年後輩でマネージャーであった
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