健とケントのひみつの特訓?

 ケントとの特訓は週1回、校内のジムの一室で行われる。普段はヨガなどのトレーニングに使われている部屋だ。てっきり個人指導マンツーマンだと思ったらもう一人いた。


 「紹介しよう、ケント・バーナードJr.ジュニア、私の息子だよ。」


 ケントに紹介された少年は柔らかそうな金髪で俺より15cmくらい背が高く、異世界おじいちゃん、そして現世おじさんのケントをさらに若くした感じだ。いわゆる「イケメン」。


「よろしく、健。僕のことはジュニアと呼んでよ。3人ともよく似た名前だからね。」

そういって俺に握手を求めてきた。それにしても流ちょうな日本語である。


 ジュニアも父であるケントから魔法の能力を受け継いだそうである。彼はプロテニス選手プレーヤーを目指しているそうだ。学年も俺と一緒で、東京のアメリカンスクールからこちらに入学したという。人懐こそうな目はまさに親父さんゆずり。さぞかし女子からモテるだろうな。


「きみとダディの旅の話はよく聞かされていたよ。ぜひ僕とも友達になって欲しい。」

もちろん。俺たちはがっちりと握手を交わした。さて、仲間も増えたところでトレーニング開始。


 まずは「ステータス表示」訓練。これは先導者チューターが勇者の教導のため対象の身体・精神・魔力の状態を把握するために能力を数値化したものを脳内で表示して閲覧する能力である。これを習得することにより体調や魔力の管理がしやすくなった。


 ケントは「数値」だけだとわかりづらいということでグラフにしたり色づけしたりしてくれる。疲労がたまったり怪我の恐れがある部位が赤く表示されたりと身体のリスク管理マネジメントがやりやすい。ところで「レベル」という概念はないの?


「日本人はレベルが本当に好きだよね。ゲームと違って人間の調子レベルは日によってアップダウンの繰り返しだからね。数字は自己管理の目安であってそれをあげること自体が目的じゃないよ。……それよりも、必ず身体から発せられる危険信号には耳を傾けてくれたまえ。」


 そして睡眠時や休憩時にも「自動回復魔法」をかけつづけるように指導される。たしかに練習の時はかけていたけれども。どうもこの魔法は「成長ホルモン」を分泌させるというのだ。まあ傷の回復とかには必要だもんね。


 「そして健。きみの背も伸びるはずだ、グンとね。」

なるほど、その手があったか!


 週一の指導だったが魔法を応用したスポーツ技術。それによって俺は身体強化系の支援魔法を使って自分の敏捷性びんしょうせいを高めて最上級のスピードを目指す。そして動態視力とそれに連動させて最上級のテクニックの獲得を目指す。さらに自動回復魔法を使ってスピードとテクニックを裏打ちするフィジカルを手に入れる。


 魔法世界では「はずれスキル」かもしれない。チートですらない。しかし、応用によっては努力が報われるとは限らない世界で確実に成果をあげていく。俺の「ステータス」がそれを物語っていた。






 

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