第17話 大人の意見


「なるほど、つまり入るはずのない高性能のAIが電車に入ってしまっているということですね」


「そうなんです。鉄君に「名前を付けてくれてありがとう」という

すごく高度な会話をするんですが、ここでも不思議とその、まあこちらの思ったような仕事はしてくれなくて。最初の言葉が保線区の人間への労いですから・・・ちょっとうるっと来るような話です」


「線路の横でびっくりしましたよ。自分たちが熱中症で、空耳かと思いました」


「そう思いますよね」

この鉄道会社のソファーにお父さんと二人で座り、前の席には会社の偉い人達、関係者と何日か前と同じだった。


「実はこの開発会社の方が大変なことになっているらしいんです。このシステムは「鉄道博物館」にアトラクションの一つとして導入される予定の物だったらしいんです。ですからその開発者たちが「故意に入れた、入れない」となっているらしくて。あまりに高性能のものの場合は、電車の運転システムに干渉する恐れがあると言われているので」


「大変だな・・・」


と僕は心の中で思った。実は僕もこのことを少し調べていた。確かに完全に自動で運転手のいない乗り物もある。でも踏切がある在来線では、運転手さんは必ずいる。無人化は試験的に行われているだけだ。


「でも・・・やっぱり鉄君がいたからしゃべったんじゃないかと言うのが我々の結論でして。お父さんはどう思われますか? 」


会社の人の言葉に


「それはどうかわかりません。ただ親バカかもしれませんが、この子は優しい子です。電車一台一台を「平等に扱いたい」という気持ちがすごく強くて、それは私たちが感心するほどです。人工知能も人間をもとに作られているでしょうから、そのことをうれしく思ったのではないですかね」


「多分それは違うよ、お父さん」


お父さんの言葉の後に僕はそう言った。


「元々電車はずっと、生きて、というか、その心みたいなものがあったんだよ。そうでなければ、名前が気に入っているとか。夜を走るのが好きじゃなかったなんて言葉は出ないと思うんだ。ずっと見ていたんだ、僕のことも、鉄道会社の人たちのことも。だからいつか話をしてみたい、おしゃべりをしていたいと思ったんじゃないかな。チャギントンやトーマスのように」


「そうだね、鉄君。どうもありがとう」


お父さんの都合のいい日に、またリモート会議に出ることになった。そして家に帰ると、お母さんがとても疲れた顔をしていて、久しぶりにおばあちゃんがやって来ていた。だから夕食はおばあちゃんの作った餃子になった。




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