第16話 別の鳥
「ああ、今年もいたね、お父さん! 」
この路線のもう一つの始まりの駅に着き、夏に必ず行く神社に向かった。古くからある大きな神社で、ご神木もとても大きい。だからなのか、ここには毎年夏が近づくと、「アオバズク」というフクロウがこの木の自然にできた穴に巣を作り、子育てをする。出てきた雛は三羽だったり四羽だったり、二羽という時もある。巣から出てきたときにはもう大人とそんなに変わらない大きさだけれど、フカフカした羽が残っているので、雛かどうかはすぐわかる。
今年も三羽のちょっとふわっとした感じのフクロウとしっかりとした茶色い二羽のフクロウが昼間この木でじっとしている。
だからこのご神木とフクロウと一緒に写真を撮るのも毎年の事だ。
「楽しそうだな、鉄。なんだか今日は違うように思うんだけど」
「多分、急に天気が良くなったから」
まあ全くの嘘ではないけれど、お父さんにはそう答えた。やっぱり何よりもここで電車の声を聞くことができたのがうれしかった。これが誰かが代わりに言っているとしても、その人はとっても優しくて、鉄道のこともとっても好きな人だろうと思った。鉄道は本当にたくさんの人の力がいる。鉄道が「日本の誇り」という人もいる。
僕も大きくなって、そうでない部分もあることがわかって来たけれど、でもそれでもやっぱりこれから先も電車が好きなままだろうと思う、お父さんと同じように。
「ああ、やっぱりこの路線はいいなあ」
お父さんも嬉しそうだった。「さあ、そろそろ帰るかな。お菓子を買って」お母さんと結のためにお土産を買うのも決まったことだ。
そうして駅に行くと、数人の男の人達、あの車掌さんを始め運転手さん、保線区の人たちがひと固まりで話しているのが見えた。そうして僕たちを見るなり、こちらにやって来た。
「すいません、これからお二人とも一緒に本社の方へ来ていただけますか? 鉄君、これはもうお父さんにも聞いてもらった方が良いと思うんだ。まあ、悪いけれど、ちょっとお母さんには内緒にしてほしいけれどね」
人気の少ないホームでそう言われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます