第8話

神殿の外に出るとさっきまで暑かった土地はすっかり大雨になっていた



「…やりすぎだ馬鹿者」

彼女の想定を超えた雨ごいにカシックが頭を抱えていた


多分俺の力はほとんど使われていない

「…本当にな」


カシックが海辺に近づくと荒波を立てて打ち寄せる波に座り込んだ


「どうするよこれ…ボートじゃ戻れねえよ」



「そう…だな」


「仕方ねえ、本来やらなくてもよかったんだが試練という名の力比べするか」



「…えっと…理由を聞いてもいいか?」



「ここの守護龍は戦いが好きだ。普段部族で力を競い合ってこの地を守ってきた歴史がある」



「つまり、俺たちが試練をすれば雨もやむと?」



「そういうことだ」



そういうと神殿の奥に建てられた場所に入る



「ここは今は使われていない。この雨だ誰も入ってこれやしない」


そういうとカシックは上着を脱ぐ


獣人らしい毛並みに整えられた筋肉が目立つ


「さぁ始めるぞ」

俺は持っていた杖を構えた


「あぁ」



「光に祈りを」


俺がそう祈ると肉体強化が施され人並外れた速さが宿った


それと同時にカシックの動きが鈍くなる

「なるほどな。自分への支援と、俺への妨害を同時にか…やるじゃねえか!だが」


「ぐっ」


彼の蹴りが杖を伝わると少し後ろに吹き飛ばされる



「肉体強化してなければ今ので死んでたな」



「あ、あぁ…」


「守ってばっかりじゃ、俺には勝てねえぞ」


…大事なのは勝つためのイメージよユノ!

頭に響く声はどうやら式神からではないようだ


「俺がそんな簡単に負けると思ってんのかティナ…ホーリーレイン!」



天井に魔法陣が出来ると光の雨があたり一面に降り注ぐ


「うわっ」



「ど、どうだ…?」



「むっこれしき」



カシックの傷だらけの体は一瞬にして治る



「なっ!?」


「超回復が鬼族だけの十八番だと思うなよ?」



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