第5話

ボートは1つしかいないから漕いできたわけじゃないだろう


まさか泳いできたのか?いやそんなはずはない

そもそも向こう側の島にいるクロードがその体であればそんなことはさせはしない

先に止めるはずだ…一体なぜ



「貴方の考えていることが手に取るようにわかります。私はボートを漕いできたわけでも泳いできたわけでもありません。その式神は緊急用だといったでしょう」



「式神を介して転移した?」


彼女はその問いに対して首を振った

「…正しくは、意識をこっちに送り式神を具現化したにすぎません」


「じゃあ向こうのお前は」



「そうですね…寝たままになっているでしょう。事が済めば戻ります。」



「あんまりイアンやザクを心配させるなよ?」



「ティナがここへ来たってことは、お前も儀式に参加するのか?」



「えぇ、念のために体内に剣を刺したままにしててよかったわ」


「剣を刺すって…本当に生きてるのかお前…」

「その言い方だと誤解されるぞ」



「あ、あれですね!祭壇は」


「って聞いてねえし、足元見ないといくらお前でも転ぶぞ」



「わっ」


俺の言う事も虚しく目の前でつまずいたティナの手を引っ張った

…が足場が悪く受け止めきれずに俺の方へティナが倒れてくる


「ご、ごめん」

俺の上に乗ったティナは申し訳なさそうに謝った



「いいよ、それより無事?」


「…大丈夫…。あ…ユノケガしてる…影の祈りを…」



ティナが俺の足へ手を掲げそう祈ると傷口が治っていく



「お、おぉ…鬼でもないのにすぐ治った…」

ティナが俺の上から降りると俺にしか聞こえない声でつぶやいた

「治ったわけじゃない。傷口は私達じゃない限りそう簡単に治らない」




「でもいったいどうして…ってまさか」



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