人へ
「傷つけたらダメってどういうこと?」
「お前兄が起きて開口一番がそれってなんか俺は悲しいぞ...。まあいいやそれはな、あの狼が聖女レイだからだよ」
「あれが聖女さんなんですか?」
アンさんが驚きの声を上げる。
「なんだ面識あるならよかったよ。あれが聖女である確信はいくつかあるんだけど一番はあれが神獣フェンリルの伝承とそっくりな姿をしていることだ」
「神獣フェンリル、ですか?」
「そうだ。文字通り神の獣、神の眷属だ。その昔神から怒りを買った眷族が神獣にされ自分の大切なものを意識がないまま壊すことになったとかそういう伝承が残っている」
「でも聖女さん、レイさんですか。レイさんは意識があるように見えますよ」
「それは多分アン達にレイを殺させようとしたんだろうな。その方が神にとっては面白いから」
なんて酷いことをしようとするのだろうとこの場にいる全員が思ったことだろう。神は眷属をそんなおもちゃの様に使い捨て敵に殺させるのか。
「であれをレイさんに戻す方法はあるの?」
「あるにはあるがそれはレイ次第だな」
俺はフェンリルの方を見る。アンに戯れついて犬みたいな挙動している。
「レイさん次第...?」
「そうレイが人型というか生者にどれだけ戻りたいか、だ。あと完全にレイを呪縛から解き放とうと思ったらレイに指示を出していた神1人倒さないといけないだろうな」
そう、レイを完全に神の呪縛から解き放つには神1人倒すのが一番手っ取り早い。どうせレイが人型に戻ったら怒ってこちらに干渉しにくるのは目に見えてるしな。
(お兄さんは気付いてくれた)
私はそのことにとても安堵した。もしかしたら私と誰も気がついてくれなくてこのまま死ぬんじゃないか。そんな不安と胸の内にはあったから。
(私次第、か)
お兄さんに言われたことを私は考えていた。狼から人に戻るのは自分次第。恐らくこれは神の呪いだろう。それを私次第でどうにかできるものなのだろうか。
「レイ、自分がやりたいことややり残したことがあるならそれを心のうちで叫んでみるといいよ」
お兄さんが私にヒントを出してくれる。ヒントというより答えか。
(私はまたお兄さんといやお兄さん達とご飯を食べたりお出かけもしたい。私だって恋愛をしたい。まだお兄さんからの質問もまだ全部答えていない!私はまだ生きたりない!)
そう心のうちで答えた途端私は光に包まれた。
「なにが...。あっ喋れる!」
「フェンリルから戻る方法に思いの強さと言うのがあるんだ。レイはそれだけ思いが強かったんだよ。何にたいしてかはわからないけど」
お兄さんはそんなことを言っているが私が戻れたのは間違いなく、お兄さんがいたからだ。
「悠馬お兄さんありがとう...」
「お礼を言うのはまだ早いぞ。あれを倒さないとな」
そうお兄さんが指をさした方向にとても複雑怪奇な魔法陣が展開されていた。
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