私は一体何をしているのだろう。確か、何かに話しかけられて...あれそのあとが思い出せないや。とりあえずお兄さんの元へ行かないと。

 私はそう思い歩き出す。私が何もできることはないとわかっているのに。



 光を見つめていたら私達は一瞬放たれたとてつもなく強い光に視界を奪われた。

 目を再び開けた私達の前に現れたのは神でも天使でもなく、狼の怪物だった。

「ぱっと見は神や天使じゃないように見えますね」

「そうは言ってもあの光から現れたからにはそれに近しいものかもしくは神の使徒である可能性もあります」

「その線が濃厚であることは確かでしょう」

 そんなことを言っていると狼の怪物がこちらに向かって全力で近づいてくる。

「やはりこちらにきますね...。苺ちゃん悠馬さんが目を覚ますまではなんとか粘りましょう」

「そう、ですね。私達だけだとどこまで粘れるかはわかりませんがやるしかないですし頑張ります!」

 こうして私達と狼の怪物の戦いが始まった。



 あれ?アンさんと妹さんがいる。ということは悠馬お兄さんは無事だったってことなんだ!そう思いアンさん達に近づいた私は攻撃を受けた。

 私を恨むのはわかるけど攻撃はしないでと私は必死に口から言葉を捻り出そうとする。

『ワォォォォーン』

 でも私の口から出てくるのは人間の言葉じゃなくて狼の遠吠えのような音ばかりだ。私は気がついてしまった。もう私は人間の形を保っていないのだと。そして彼女達に私が私であると伝えることができないということに。



「アンさん何か様子が変じゃないですか?」

 こちらにまっすぐ向かってきた狼の化け物はこちらの攻撃に反撃するわけでもなく、ただ悲しそうな遠吠えをしているだけだ。

「何かがおかしいのはわかりますが私達にはそれが何かを見分ける手段を持ち合わせていません」

「確かにそうなんですが...あの子苦しんでいるように見えるんですよね。とりあえず一度攻撃をやめてみませんか?」

「それで私達と悠馬さんの誰かが傷ついたらどうしますか?」

「それは...」

 私は言葉に詰まる。その通りだ。私達が傷ついたらお兄ちゃんは悲しむだろう。それが自分を助ける為だと知ったら尚更。私達はお兄ちゃんがこれ以上傷ついたら悲しい。つまりいくら様子がおかしくてもこの狼に攻撃をやめると言う選択肢は私達にはない...。

 もう一度攻撃魔法を放とうと構えたその時倉庫の扉がガラッと開き声が聞こえてきた。

「その子をそれ以上傷つけたらダメだ」

 お兄ちゃんの声だった。


 —————————

 昨日暑いうちに調子に乗って歩いていたらまた熱中症になりました。気をつけます...。すいません。

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