神との邂逅

 複雑怪奇な魔法陣から1人の男が姿を現し言葉を話し始める。

「やあ僕の可愛いペットちゃん?」

 気持ちの悪い声色だ。まるで人をものとしかみていないようなそんな見下した意思も見え隠れしている。

 だが横でレイが震えているところを見るとこいつが件の神だか天使らしいとわかる。

 ずいっとこちらに男が近づき目にも留まらぬ速さでレイを首を持ち上げる。

 俺達はその余りの速さに足が動かなかった。

「ところでさそこの朝霧悠馬とその取り巻きが死んでないのはどういうことなのか僕に教えてもらってもいいかな?」

 顔は笑っているが目が笑っていない。こいつはおそらく、いや確実に放っておけば答えも聞かずにレイの首を絞めて殺すだろう。そのぐらい死をなんとも思っていない目をしている。

 レイの目から徐々に光が失われていく。



「おい、お前いい加減にその辺にしとけよ」

 俺はやっとの思いで声を発する。

「あぁ?お前に関係あんのかよ?これは家庭の問題だ、僕とこの出来損ないのな」

「関係はあるよ。俺はもうその子を大事な友達だと思ってるし救うと決めた。それだけじゃお前ら神にとっての理由としては足りないか?」

「くくく、いや僕への無礼を許してやろう。モノを人として扱う優しいお前に少し興味が湧いた」

 モノか確かにこいつらからすればレイは自分達の創り出した言うことを聞くただのモノなんだろう。感情をわざとつけて反応を楽しんで趣味の悪いことだ。

「ほらよ大事なお人形さんは返してあげよう」

 そういいレイをこちらに投げてくる。

「だけどそれをあげる代償が必要だね」

 そういい暫く悩んだ後出てきた言葉はこいつらの身勝手さを象徴するような言葉だった。

「あっそうだ!朝霧悠馬君、君にその子をあげるから君は死んでくれない?それが代償だ。勿論君が死んだ後は彼女らは無事に家に返してあげるよ。ただしたっぷり楽しんだ後、ね」

 ねっとりとした気持ちの悪い目つきでアンと苺を見る。俺は気を失っているレイをアンに預け全力で神に向かって走り出した。氷の拳を纏いながら。



 そうして近づいた俺は気持ちよさそうにその続きを話している神をぶん殴った。

「お前いい加減その気持ち悪い口閉じろよ。不愉快だ」

 自分でも何故こんなに怒っているのかはわからない。ただ彼女達をそういう目に合わせるのだけは俺としては許せなかった。

「お前僕を殴ったな!僕を誰だと心得ている!」

「誰、か。明確に神名なんかがわかるわけじゃないが神だろ?」

「それをわかって殴ったというのかお前は!」

 怒り狂っていらっしゃる。悪いがこちらの世界では神とかそう言うものに対する信仰の心はない。

「どうも学院の教育が悪かったらしくて神を殴るなとは言われたことないんですよね。不思議なことに」

「いいだろう。本当はお前の前でモノを先に壊す予定だったがお前から殺してやる!」

 そう吠えた神は俺に向かって拳を振り上げて迫ってきた。

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