生徒会長の依頼
「なんですか?」
「いえ、少し昔の知り合いに似ている気がして...」
「それって新手のナンパかな?」
「いえ違います!本当に似ていたんです。人違いならすいません」
「そうか、じゃあそういうことにしておこうかな。ところで君、名前は?」
「朝霧悠馬です」
女の子はほうと目を細める。
「君、学院生だよね」
「はいそうですけど...」
「明日生徒会室に来てみてくれ」
「え?」
「えもでももなし。明日きちんと来ることいいですね?」
「はい、わかりました」
何かよくわからないが女の子はそれだけ伝えると去っていった。不思議な人だというのが俺の第一印象だった。
俺は次の日言われた通りに生徒会室を訪ねていた。どうして言われた通りに尋ねたのかはわからないがそうした方がいいと何故か思ったのだ。
《コンコン》
「はい?どなたですか?」
「朝霧悠馬です」
「ああそうでしたね。どうぞお入り下さい」
俺はそう促されドアの奥に足を踏み入れる。
中に入るとあの女の子が立っていた。
「いやまさか素直に1人できてくれるとは思わなかったよ。それこそオーガスタのお姫様とか模造の出来損ないとかを連れてくるものだと」
俺はリタを馬鹿にされているのを感じたので少し怒りを感じる。あれでもどうしてこの人がリタの結界が模造だと知ってるんだ...?
「あはは、そんな怒らないでくれよ。僕は君とは仲良しでいたいんだ」
「先輩はどうやら物知りのようですね。でもどうしてそこまで知ってるんですか?」
俺は怒りを抑えながらあくまで冷静に問う。
「それはね、僕が生徒会長だからかな。学院の生徒会は学院で起きた凡ゆる情報が耳に入るんだよ。それこそ君の妹が誰で君がどういう精霊と契約してるかまでね」
「なるほど。それで俺に何の用ですか?」
「君には生徒会の手伝いをしてほしいんだよ」
「手伝いですか?」
雑用とかだろうか?まあ別にやれと言われたらやるが。
「そうだ。君のところの戦闘訓練の教師いるだろ?あいつがどうにもきな臭い」
「それは俺も気になっていました。友人もそう言ってましたし怪しいですよね」
そう、神を体内に宿していたリタが怪しいと言っていたということは神や天使の類ではない可能性の方が高いということ。
要するに神や天使を悪魔と呼んでいるものではなく、本当の悪魔や邪神である可能性がある。
「報酬はそうだね、あの模造品の記憶を私が忘れるというのはどうだろうか?あれは本来君とお姫様が庇ったとはいえ、学院に通える立場かと言われると怪しいだろう」
それが決め手となり、俺は依頼を受けることにした。
「はぁーい、今日も授業を始めていきますよ〜」
例の戦闘訓練が始まった。教えてくれることは至ってまともな内容で魔法や武器の扱い方がメインだ。ここまでは怪しい場所は何一つない。
だがここからが問題で先生との組み合いの時リタが至極嫌な顔をするのだ。いつもはあんまり聞かないようにしているのだが、今回ばかりは依頼なので俺はリタに尋ねる。
「毎回あの教師との組み合いで嫌な顔するけど何か嫌なことでもあるの?」
「何かあの教師と組み合いをすると神力が溜まっている指輪から力が抜かれているような感覚に陥るんですよね。それで結果的に私の力が落ちているような感覚を」
「なるほど、それは嫌だな。神力が溜まっている指輪ってこの前神の一部を封印したやつだよな?」
「はい、それです」
それは何か嫌な予感がするな。神力なんて俺みたいな普通の人間には見えないし、リタみたいな巫女かそれに関連した人にしか見えないはずなわけで。
とりあえず俺は気を抜かずに授業以外でもあの教師を監視することにした。
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