アンとの誓い
「悠馬さん、試験の方はどうでしたか?」
アンが興味津々と言った感じで俺に試験の結果を聞いてくる。
「いやぁ落ちたかも...なんて」
俺は若干困り顔でアンにそう伝える。
「えぇ!?なんでですか?」
実は、と試験中に起こったことの経緯を説明する。
「それは悠馬さんは悪くないと思うのですが...もし仮にこれで悠馬さんが落ちたら私は学院に抗議を入れようと思います」
「いやそこまでしてもらわなくてもいいよ。俺は学院には行きたいけど別に1回浪人してもいいし」
「それではダメなんです!」
とアンが勢いよく机を叩いて立ち上がる。
「私が朝一緒に悠馬さんと登校してお昼ご飯を食べたり、放課後に遊びに行ったりっていう計画が崩れるじゃないですか!」
「アン結構凄いこと言ってるから一旦落ち着いて」
立ち上がってるアンを落ち着かせ座らせる。結構大胆なことを言ったことに座ってから気づいたアンは顔が真っ赤だった。
しかし、確かにそうだ。俺は攻略RTAをするっていう決心の元動いてるはずなのに1浪なんて許容してはいけないのではないのだろうか。
恥ずかしさから立ち直ったアンがそういえばとこちらに聞いてくる。
「悠馬さん、面接は受けましたか?」
「面接?そういえば受けてないな...」
「おかしいですね。面接は全受験生に平等に与えられた場のはずなんですが」
そんなことを話しているとどこからか黒猫が部屋に入ってきた。
「猫?」
アンが不思議そうに黒猫を見つめる。アンは気づいていないようだが俺はあれの正体に気付いていた。あれは学院長が飼っている使い魔だ。
『貴方が朝霧悠馬さんですね?』
案の定黒猫が話し始めた。
「わっ、悠馬さんこの猫さん喋りますよ!」
「アンこの猫は誰かの使い魔だ。そしてそこの黒猫さん、俺が朝霧悠馬であってるよ」
『では貴方には明日面接の機会を設けます。また学院までいらしてください』
という訳で俺は明日急遽試験日にできなかった面接を受けることになった。
そんなこんなで二日連続学院にきた俺は早速学院長室に真っ直ぐ向かう。
《コンコン》
俺は学院長室の扉をノックする。
「何方ですか?」
昨日黒猫を通して聞いた声と同じ声が聞こえる。ビンゴだ。
「面接に来ました、朝霧悠馬です」
「よくきましたね。入りなさい」
そう言われ学院長室の中に招かれる。
「よく私とわかりましたね、朝霧悠馬さん」
「使い魔なんて珍しいものを使ってる人も持ってる人も生憎貴女しか思い浮かばなかったもので」
「貴方学院に入るより探偵養成所に入った方がいいのではなくて?」
中々ジョークの聞いた皮肉だなと俺は思う。
「いえいえ、事情があり俺にはどうしても学院に入らないといけない理由があるので」
「貴方程魔法が使える人がわざわざ入りたい理由も気になりますけど今日の目的はそれではないのでしたね。そこにかけてください」
あれは促されるまま椅子に座る。
そこからの面接は普通の質問だけだった。例えば使える属性、魔法の種類、契約している精霊はいるか、そんなところだ。
面接が終わって俺が学院長から告げられたのは合格だった。
「お帰り、お兄ちゃん」
「ただいま、苺」
「お帰りなさい、悠馬さん」
「ただいま、アンってなんで当然のように毎日家にいるの?」
「苺さんと相談の結果私は明日からここに住むので...」
ん?よく聞こえかったのでもう一度聞いてみよう。
「ごめん、アン俺今耳が急激に老化したみたいなんだ。なんて?」
「私明日からここに住みますのでよろしくお願いします」
んーどうやら聞き間違いではないらしい。いや普通にまずいだろ。そりゃうちは部屋がかなり余っているが。一国の姫様だぞ。
「その顔は一国の姫様なのにまずいだろって思ってますね!」
ズバリと言った感じでアンが的確に俺の今の気持ちを代弁してくれる。
「まあそうだな。普通に考えて男の住んでいるところって言う時点でまずいと思うが」
「そこはもう実は解決済みなんですよ。悠馬さんを本国に手紙を送って騎士の位につかせるようにしました!」
いやそんなドヤ顔で言われても困るのだが。俺がオーガスタ王国の騎士の位?冗談だろ...。
「しかもですね、私の専属ですよ!つまりオーガスタ王国にいる必要もないんです」
なんかすごいことですよ!みたいに言ってるけど無理やり騎士にしたのそっちだからね?
「なんか話がよく飲み込めないがそうなのか...。2人はそれでいいのか?」
「うん、私はアンなら大歓迎だよ」
「お前がそういうならいいけどさ...」
「ちなみにわしも歓迎じゃぞ!」
それなら俺は別にいいんだけどさ。
「でですね、悠馬さん。今から叙勲の儀式をするので私の言葉の後に続けてもらっていいですか?あくまで型式だけですので」
「わかった」
「我、騎士の位を姫より授かりしものなり。
生涯に渡り、姫を守り抜くとこの剣に誓う。」
俺はアンが言った通りの言葉を繰り返す。
「我、騎士の位を姫より授かりしものなり。
生涯に渡り、姫を守り抜くとこの剣に誓う。」
「はい!これで貴方は立派な私の騎士です。私をどうか守ってくださいね、騎士様」
そうとばっかりの笑顔で言われたらもう俺の負けだ。
「わかりましたよ、姫様」
こうして俺はなぜかオーガスタ王国の騎士の位を得たのだった。
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昨日妙に伸びると思ったら異世界の日刊ランキングの端に載せていただいていたようで読んでくださったりお気に入りをくださる皆様に本当に感謝です!
これからもこの作品を応援いただけると嬉しいです!
P.S.1000pvも達成しておりました。ありがとうございます!
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