学院への入学
「そういえば聞き忘れてたんですけど、学院は合格したんですか?」
俺はすっかり騎士のインパクトに負けて伝えるのを忘れていた。
「ああ無事合格したぞ」
「じゃあ明日から一緒に登校出来ますね!」
あんは心底嬉しそうに言う。そんなに一緒の登校が嬉しいのか?
「アンいいなぁ」
「苺ちゃんも来年は一緒に登校できますよ」
「まあそうだね。それまではお兄ちゃんをよろしくね」
「はい、任されました」
二人は俺の保護者なんだろうか?そんな考えが頭をよぎったが気のせいだと頭を振る。
「じゃあ行きましょうか、悠馬さん」
「ああそうだな」
俺達は2人で学院の入学式へと向かった。ちなみにリスタはお留守番だ。
二人で歩いていると何か妙に注目を集めている気がする。いやそれも当たり前の話なのかもしれない。なんたって俺の横を歩いているのは一国の姫なわけで。その横を男が歩いていたら何回か見直すだろう。
「おいみろよ、姫だぞ」
「あれが噂のオーガスタの箱入り姫か。隣を歩いてるの誰だ?」
「さあ分からないが、ただものではないのだろうな」
そんな声が学院に着いた時からちらほら聞こえてくるが俺は普通の一般人だ。君らと同じだと言いたい気持ちをぐっと抑える。
「これはこれは!アンリエッタ姫ご機嫌麗しゅう」
周りが遠慮する中いきなり声かけてきたのは俺に入学試験でボコボコにされたアルヴィスだった。
「ああアルヴィス家の...。ご機嫌麗しゅう」
アンは完全によそ行きモードの姫様だ。これもこれでいいな。
「ところでアンリエッタ姫、つかぬことをお伺いいたしますがどうしてそんな男と歩いてらっしゃるのでしょう?」
まあそりゃそうなるよなと思った矢先、横からプッツーンとキレる音が聞こえた気がした。
「あら、貴方私の恩人に向かって随分な言い草ですね」
「恩人だったのですか。ただそれだけで姫様ともあろう方が男を侍らすのは如何なものかと...」
俺はもう知らない。怒ったアンは『アルカディアの明日』の中でも結構怖かったのだ。
「貴方、私の騎士を今侮辱しましたか?」
「騎士?その男が?」
「ええそうですよ。貴方の爵位よりも到底高い近衛です」
するとアルヴィスの顔がだんだんと青くなっていく。近衛ってこの坊ちゃんよりも権力があるんだ。勉強になるな。
「どういうおつもりですか?そんな男に近衛を与えるなど...」
「どういうつもりもこういうつもりも御座いません。私は恩人であり、この世界で1番腕を信頼しているこの方に近衛の称号を贈ったのです。それとも貴方は私の目が節穴であると...?」
アンさん怖いです。しかもさっきからわざとだと思うが結構大きめの通る声で口論をしている。
「チッ、お前覚えてろよ」
なにも言い返せることがなくなったアルヴィスのお坊ちゃんが何処かに行ってしまった。
「アンわざとやってたでしょ」
「あら、悠馬さん私は貴方のような男を騎士に任命する節穴の目を持っているのでなんのことかわかりませんね」
と笑顔で返される。結構ボケてる印象が普段から過ごしているとあったが流石に一国の姫だ。今の口論だけで俺をお気に入りでしかも近衛の騎士であるということを印象付けさせた。俺の学院生活における立場を保証したわけだ。末恐ろしい子だ。敵じゃなくて良かったと心底思う。
長い学院長の話も終わり、俺達はクラスへと案内された。この学院は1学年でAからDの4クラスに分けられる。これは成績によって変わる。俺とアンはAクラスのようだ。
しかし馬鹿と天才は紙一重というだけあって変な奴ばっかりいる。ずっと刀の手入れしてる子もいれば、踊ってる子もいる。カオスすぎる。
ガラッと扉が開き教師らしき人が入ってくる。
「私がこのクラス担任だ。早速だがまずお前達にはパーティを組んでもらおうと思う。2人から5人だな。ちなみに年の途中にメンバーを変更すること可能だ。今は仮とでも思っておいてくれ」
そう先生が告げた途端アンに人が殺到する。当たり前だろう。姫様に媚をここで売れたらどれだけ後々が楽になるかという話だ。
俺はそんな殺到してる人を横目にアンに来ていない人物を見る。雄、さっき刀を手入れしてた人、踊って人か、面白いな。
「皆様悪いのですが私は今、騎士である悠馬さん以外とパーティを組む気はありませんのでお帰りください」
と横で人だかりを一蹴するアン。俺はかなり恨みがましい視線を向けられるが知ったこっちゃない。
「よし、とりあえず決まったみたいだな。明日からダンジョンに潜る時や実戦演習の時はその組み合わせの中で回してもらうから仲良くしておくこと!いいな!」
そんな感じで俺とアンの学院初日が終わりを告げたのだった。
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明日も二話投稿予定です。是非よろしくお願いします!
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