魔法の制御
「ふーんその人精霊さんなんだ」
「端的にいうとそういうことだな」
家に帰った俺は機嫌を損ねた苺に必死に説明を続けた。その甲斐あってかなんとか口は聞いてもらえるようにはなった。
「でも普通の精霊さんって動物だったり虫だったりそういう外見が多いよね?」
「そうだな。精霊は自身の生まれたルーツの体の形をしていることが多い。ただこの子はちょっと特別でな」
「特別?」
「そうだ。この人は所謂大聖霊と呼ばれる普通の精霊より高位の精霊なんだ」
「昔本で読んだことがあるかも。通常の精霊より高位な精霊は人の形をとることが多いって」
「とりあえず苺じゃったか?わしはリスタ•ベルグじゃ。悠馬の家族ならリスタと気軽に呼ぶがよい」
「わかりました。リスタさん少し頼りない兄ですがよろしくお願いします」
「うむ!任されたのじゃ!」
これでとりあえず一件落着だ。無事に解決したみたいで助かった。
《ピンポーン》
次の日俺はチャイムの音で目が覚めた。いつも起こしてくれていた苺はというとリスタと魔法について語り合うのが楽しくて忘れていたらしい。珍しいこともあるもんだ。
「あっやっとお兄ちゃん起きてきた」
「悠馬さんおはようございます」
起きたその足でリビングに向かうと楽しく苺とアンとリスタが談笑していた。いやアンはなんでさらっと溶け込んでるんだ...?
「悠馬!わしはこのアンとかいう娘気に入ったぞ!苺共々きっちりと教えてやろう」
どうやらリスタはアンのことが結構気に入ったらしい。それならそれで俺はある程度自分の魔法を研究できるからいいんだが。
「そういえばアン、お主魔法の種類はわしが教えるが魔法の制御と魔法の発動のさせ方、威力の高め方は悠馬の方がわしより優れとるから悠馬から習った方が良いぞ」
「そうなんですか。やっぱり悠馬さんはすごいのですね」
「うん、お兄ちゃんはすごい」
と若干嬉しそうに言っているアンと苺は置いておき俺はリスタに尋ねる。
「魔法の制御なんかは精霊であるリスタの方が上手いんじゃないのか?」
「一般的にはそうじゃ。ワシも例外に漏れずそこそこ制御が上手い自信はあるが、しかしじゃ。悠馬お主は流石に制御の質が異次元すぎる。アンから話を聞いたぞ、相手の魔法を発動前に魔法陣ごと凍らせたらしいじゃないか。しかも相手の手には干渉せずに」
「それはやった記憶があるがそんなに難しいことなのか?それって」
「難しいどころの話じゃないぞ。多分世界のどこを見渡してもそんなことやってのけるのはお主ぐらいじゃろうて」
あれってそんな高度なことだったのか。俺は少し驚いた。何故ならそういう技はゲーム内であれば普通に描写されていたことであるし主人公である雄は普通にやってのけていた。
もしかしてこの世界はゲームの『アルカディアの明日』より魔法のレベルが低いのか...?そんな不安を少し覚えたが、そんなことよりも、今は目下アンと苺に教える方が優先だと気持ちを切り替える。
「じゃあまず魔法の制御の話からしようか」
『よろしくお願いします』
三人から挨拶される。ん?三人?
「え?リスタも受けるの?」
「当たり前じゃ。わしもたまには勉強せんとな」
大精霊でも勉強はするらしい。
「なるほど。とりあえず制御の話からね。魔法の制御っていうのは結構単純だったりするんだ。例えばこの氷を溶かすとしよう。3人はどうやって溶かそうと思う?」
「炎で包み込む」
「私はまだ魔法では溶かせないので鍋に入れるとかでしょうか」
「わしも苺と同じく炎で溶かすじゃな」
と三人の回答が帰ってくる。ここでそうここまでわかってると実は結構簡単な話になってくる。
「じゃあ逆に聞くが苺とリスタは氷を中から溶かそうと思ったりはしないか?」
「なるほど。その手があったか」
リスタだけが理解していそうなので2人の為にもっと噛み砕いて説明する。
「要するに考え方の問題だよ。これが氷じゃなくてもいい。火を消すには水をかけるだろ?でもそれって外から水をかけてるわけで内側から水を出して火を消したらどうなるかって考え方ある?」
「いやなかったかも...」
「私もお恥ずかしながらそういう考えはしたことがなかったです」
「つまりそういうことなんだよ。固定概念を捨てるべきと言った方がいいのかな」
なるほどと言って苺が俺の出した氷を中から炎出して溶かした。この考え方はこの世界だから通用すると言っても過言ではない。何故かというとこの世界の魔法はゲームの時から変わらず基本的に物理法則を無視するのだ。つまり氷の中に炎の魔法を発動させ中から溶かすといった芸当は意外簡単にできる。
「俺の制御の基礎はこんな感じでできてる。応用はまだ色々と俺にも分かってないから教えられないけど...」
「いやよい。勉強になったわ」
「やっぱりお兄ちゃんはすごい」
「ですね。悠馬さんは私が見込んだ通りすごい人です」
そうしてその日アンはリスタから魔法を勉強して明日もきます!といって帰っていった。
「お兄ちゃんちょっといいかな」
と俺は夜苺に苺の部屋に呼び出された。
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