大精霊との契約
次の日も俺は必死に本を読み漁り知識をつけていた。
「のう、いい加減わしの話を聞いてくれんか?」
俺はここで初めて本から顔を外し声のする方を見た。
そこには小学生ぐらいの幼女が座っていた。
「どなたですか?」
「わしはお主と昨日から一緒にこのクソつまらん本を読んであげていた優しい精霊様じゃ」
「精霊!?なんでこんな図書館にいるんだ」
精霊といえばもっと森とか綺麗な水の近くとかにいるはずだ。
「それは話せば長くなるじゃがの」
そこから精霊の話が始まった。だが長すぎる。要約するとこうだ。自分はある組織に囚われ研究されていたが飽きて波長の合う契約者を探し外に出てみたら俺がいた。
なるほど、わからん。
「つまり俺がその波長の合う契約者だと?」
「まあ要約するとそうじゃな。でどうじゃ?わしと契約してみないかの?」
「嫌だよ。なんで見ず知らずの精霊と契約しないといけないんだ」
そう俺は知っていた。この世界では精霊との契約という行為があるのだが基本的には一生に一回のみだということを。雄なんかは特別だから数人と契約してた気がするけど...。
「まあそう言わずにわし実はすごいんじゃぞ」
ふんとない胸を張る精霊。
「主にどの辺りが?」
俺は胸の辺りを少し見ながら聞く。
「ちょっと失礼なこと考えたじゃろ。まあいい、まずわしはそこら辺に落ちてる本の知識を全て持っておる。それに加えて魔法制御を手伝うことも可能じゃ」
「え?本当か?だとすると普通に契約したいんだが」
「当たり前じゃろ。わしは氷の大精霊リスタ•ベルグその人じゃぞ」
氷の大聖霊といえば確か雄が契約していた精霊の一人だ。なるほど雄はこうして出会ったわけか。
「氷の大精霊ならこちらからお願いしたいぐらいだ。いいよ、契約しよう」
「本当か!?それはありがたい。早速儀式をしようか」
精霊との契約には儀式がある。儀式と言っても精霊によって様々で本格的なものを望む精霊もいれば口上を伝えるだけでいい精霊もある。勿論この時精霊側が契約者が自分に釣り合わないと考えれば対価を要求されることもある。有名なものであれば魔力、下手したら死後の体を要求されるなんてこともあるらしい。俺が精霊契約をしたくなかった理由の一つでもある。
「じゃあわしの言葉を続けていってくれ。我は契約を望む。この者、と名前なんじゃ?」
「ああすまん、伝えてなかったな。朝霧悠馬だ」
「悠馬じゃな、こほん続けるぞ。我は契約を望む。この者朝霧悠馬その人と」
「我の契約を望む。この者リスタ•ベルグと」
そう言葉にした瞬間とんでもない魔力と知識が一気に俺の中に流れ込んできた。
「これで契約完了じゃ。よろしくな悠馬!」
「対価とかはとらないんだな。よろしくリスタ」
「当たり前じゃ。対価を取るということは悠馬がわしに釣り合ってない時だけじゃ。悠馬はわしに魔力量も釣り合っておる」
「そんなもんなのか」
「そんなもんなのじゃ」
俺はひとまずやることもなくなったので図書館を後にした。
「ところで悠馬少しだけお主の記憶を覗いたのじゃが、小童共に魔法を教えるらしいな」
「ああ、その為に勉強してたわけだしな」
「ならわしもその小童共に魔法を教えてやろう!どうじゃ?」
「まあいいんじゃないかな。大精霊の教えなんて滅多に受けれるものでもないし」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
リスタは嬉しそうに頷いていた。なんかこいつを見てると娘を見てる感覚に陥るのは気のせいか?とりあえずいい子みたいだしいい精霊と契約できてよかったと俺は胸を撫で下ろすのだった。
「ただいま、苺」
「おかえり...お兄ちゃんその人誰?」
事前に苺に説明をするのを忘れていたせいでこの後2時間ぐらい口を聞いてもらえなかったのは秘密だ。
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