アンと苺との約束

 アンリエッタ=シック•オーガスタは確かとある国の第一継承権のある王女様だったはずだ。結構なおてんばで護衛をつけずに一人で街を歩いていたところを暴漢に襲われてそこを雄に救われて恋にという感じだったか。

 確か作中では王族しか使えないバカ威力の範囲魔法をぶっ放すという戦闘スタイルだったと思う。



「悠馬さん私の顔に何かついていますか?」

「いやいやなんにもついてないよ。ありがとうアンさん大事にするね」

「はい!後なのですが私に魔法の使い方を教えて頂けませんか...?お恥ずかしながら私魔法を一つしか使えなくて」

「お兄ちゃんって魔法を人に教えれるぐらい使えたっけ?」

「はい、それはもう素晴らしい氷魔法でしたよ。思わず見惚れてしまうほどには」

「へーそうなんですね。私も今度教えてもらおうかな」

「いや俺はそんな人に教えれるほどじゃないよ。アンさんも俺なんかよりもっときちんと教えてくれる人がいると思うけど」

「どうかお願いできませんか?学院が始まるまでにはどうにか魔法をある程度扱えるようになりたいのです」

「学園が始まるまでか...。苺、学院が始まるまであとどのくらいある?」

「2週間ぐらいかな?」



 俺は考えた。

 正直目標を達成する為にここで王女様と仲良くなっておくのも悪いことじゃないとも思うが俺にこの世界の魔法の基礎知識はほとんどないに等しい。中途半端なことを教えても彼女の為にはならないだろうし俺自身も失望されるだろう。そんなことを考えながら出した結論はこうだった。



「2日待ってくれないか?2日後からだったら少しなら教えれると思う」

「本当ですか!?」

 目をキラキラさせながらこちらに喜びの表情を向けてくる王女様。

「本当だ。ただし俺が間違っていることもあるだろうから学院に行ってここが貴方の言っていたことと違ったとかはなしで頼む」

「はい!勿論です!では二日後にまた伺いますね」

 そんなことを言いながらアンは帰っていった。

「お兄ちゃん、さっきも言ってたけど2日後から私にも教えてくれないかな?」

「苺は魔法の制御も威力も完璧だろ。今更俺が教えることなんてあるか?」

「私にも課題はあるんだよ。ダメかな?」

 どうやら俺は美少女の上目遣いに弱いらしい。渋々ではあるが承諾をしてしまった。



 次の日俺は図書館に居た。そう約束をしてしまったからにはきちんと守らないといけない。俺は2日で魔法の基礎全てを頭に入れるつもりで来ていた。



「まず魔法基礎の本からと」

 俺は棚から本を選んでいく。魔法基礎、魔法陣の書き方、魔法の制御基礎etc...。

「君はもしかして魔法の基礎を勉強しにきたのか?」

 読む本を選び終わり席で本を読んでいるとふとそんな声が聞こえた。おれは本を読むのに夢中だったので適当な返事をする。

「はい、そうですよ。貴女も読みますか?」

「ははは、お主面白いこというな。まあでもお主は面白そうだし一緒に読んであげよう」

「そうですか。ありがとうございます」

 この適当な返事が後々大変なことになるとはこの時の俺は思いもしなかった。

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