アンからのお礼
アンと別れた俺は今日のところはとりあえず帰ることにした。
「ただいま、苺」
「お帰りなさい、お兄ちゃん」
そんな他愛ない会話を交わしながら夜ご飯を食べ自室に戻った俺は携帯を見て驚いた。何故なら早速アンからの連絡が来ていたからだ。俺は早速ウキウキで返事をする。
『こんばんは。悠馬さんであってますか?』
『こんばんは。アンさん俺が悠馬以外ならその聞き方だと返信が来ないと思いますよ』
『言われてみると確かにそうですね。今度から別の聞き方にしてみようと思います。さて話題は変わるのですが、ご迷惑でなければ明日そちらに伺っても宜しいでしょうか?』
『あぁ多分大丈夫だよ。アンさんはどこらへんに住んでるの?よければ迎えにいくよ』
『私は学院の近くです。いえ恩人に迎えきていただくのは流石に忍びないので自分で出向こうと思います。悠馬さんの家はどちらにありますか?』
『俺の家は市街地の方だよ。わかりやすい場所にあるから地図送っとくよ』
『ありがとうございます。ではまた明日お伺いしますので』
そんな感じで会話は終わったわけだが俺はずっと何かが引っかかっていた。
「アンってなんかどっかで聞いた気がする名前なんだよな...」
そう出会った時から考えているが答えが出ない。どこかで見た容姿、どこかで聞いた名前なのだ。
「まあわからないことを考えても仕方ないし明日に備えるか。苺にも伝えとこう」
そんなこんなで俺の『アルカディアの明日』の中での1日が終わった。
「おはようございます、お兄ちゃん!」
「ああおはよう」
今日も朝から元気な苺に起こされる朝だ。
「そういえばお兄ちゃん今日お客さん来るんでしたよね。男性の方ですか?」
「いや女の子だけど...」
「あっそうなんですか...。わかりました」
なんだ?苺の元気が一気になくなった気がしたが。
《ピーンポーン》
「きたみたいだから行ってくるよ」
と俺は少し怖い雰囲気になった苺を残し部屋を後にした。
「初めまして、アンと申します。この度は悠馬さんに助けていただいたお礼を直接お伝えしたく伺わせていただきました」
と苺に優雅なお辞儀をしながら自己紹介をするアンさん。
「初めましてアンさん。私はお兄ちゃんの妹の苺と言います。態々ありがとうございます」
何故かお兄ちゃんの妹の部分を強調して伝える苺。
「苺ちゃんよろしくお願いします。お話は変わりますが悠馬さん本当に昨日はありがとうございました。これはお礼です」
とアンから箱を差し出される。
「開けても大丈夫?」
「はい、悠馬さんの為に持ってきたのでどうぞ開けてください」
許可も取ったので早速箱の梱包を開けていく。
すると中から指輪が出てきた。
「指輪...?」
「はい、これは持ち主の魔法威力を高めるというものです。私には事情があり不要なものなのでよければと」
「いやそれって結構お高いものなんじゃ...」
「いえいえ、お礼ですのでその辺はお気になさらず」
俺はこの時一つのことを思い出した。出会いが暴漢を退治するイベント、お礼が魔法威力上昇の指輪、見た目の銀髪、アンという名前。この子は『アルカディアの明日』のメインヒロインだったアンリエッタ=シック•オーガスタだ。
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