アンとの出会い
「ここがあの駅前か」
俺は『アルカディアの明日』の中で唯一と言っていい繁華街に来ていた。駅前と言ってもどこか別の都市に移動することはゲームシステム上できなかった。
『アルカディアの明日』の中で繁華街がここしか存在しない明確な理由が実は存在する。そもそも舞台であるここアルカディアは学術都市に近く、魔法の最先端が集まる場所だったはずだ。その為ほとんどの土地が学院や研究機関、それに付随する企業が使ってしまっている。
そうすると必然的にゲーセンや飲食店服屋さん等は一ヶ所に集まるし無いわけでその場所がここ駅前だ。
「ぼーっとしてる時間はなかったな。何かヒントを探すか」
とりあえず俺は駅前を探索することにした。
数十分後俺はあることに気がついた。
「これ端から端まで探索してたら1日じゃ足りないぞ...」
そうここ駅前と呼ばれる場所はゲームで探索している時よりも数倍以上広かった。ゲームでいけないところもあっただろうし当たり前と言えば当たり前なのだがにしても広すぎる。
そんな感じで歩いていると俺は雰囲気が変わったのを感じとった。
「ここはまずいな。ヤンキーとかそういうのが屯してる雰囲気を感じるぞ」
そんな独り言を呟きながら引き返そうとした時女性の悲鳴が聞こえた。
「あーイベント発生ってやつですかね」
そんなことを呟きながら女性の悲鳴を聞いて助けに行かないのも忍びないので助けに行くことにする。
「この辺りか?」
数個角を過ぎ、悲鳴が聞こえた辺りに到着した。
ふと横を振り返るとそこが現場だった。
「あーえっとすいません。ちょっといいですか?」
と俺は丁寧に女の子を襲っているであろう不良達に声を掛ける。
「あぁ?なんだてめぇは?」
「いやただの通りすがりなんですけど、そこの女の子が嫌がってるようなので少しだけ声をかけてみただけみたいな?」
女の子の方をチラッと見ると酷く怯えた様子だった。
だがどこかで見たような綺麗な銀髪をしていていて初めて見た気がしない。
「あぁそうかい。兄ちゃんこの人数にボコボコにされたくなかったら今すぐここから消えな」
と後ろからゾロゾロと人が出てくる。4人もいたのかよ。
「いえいえ、俺もそうしたいところなんですけど怯えてる女の子を放って逃げたなんて聞かれた日には罵倒を浴びせられて数日間ご飯抜きにされそうなので逃げたくても逃げられないんですよね」
「何を訳のわからねぇことをいってやがる。とりあえず一発食らって寝とけや」
全員から魔法と拳が飛んでくる。
なるほど。ほとほとバランスが取れている。魔法使い2人に前衛2人か。
俺はまず魔法の対処からすることにした。
魔法使いの術式を魔法が放たれる前に凍らせる。
「なっ!?」
男達と女の子から驚きの声が聞こえた。
その後驚き動きが鈍った前衛の拳を氷で空間に固定した。
「空間ごと凍らせた!?」
やっぱり男達だけじゃなく、女の子からも驚きの声が聞こえた。
「君大丈夫?」
と俺は手を差し出した。
「あっはい、大丈夫です。お助けいただきありがとうございました」
「いや大丈夫だよ。困ってる女の子を助けないと後で妹からお叱りを貰いそうだったし」
「そうでしたか。今度お礼を言いにお伺いさせていただきます。お名前をお聞きしても?」
「俺は朝霧悠馬だよ。お礼とか欲しくてやったわけじゃないから別にいいんだけどね。そっちは?」
「私はアンリエ...いえアンです。いえ必ず伺わせていただきます。悠馬さんよろしければ何ですが携帯の番号を交換してもらっても宜しいでしょうか?」
「携帯の番号?別にいいけど何に使うの?」
「今度お礼を言いにいく際に場所が分からないので待ち合わせの為と先程のお見事な魔法をできれば少しだけでもご教授願いたいと思いまして...駄目でしたでしょうか?」
と上目遣いで頼まれたら彼女いない歴年齢の俺に断れるわけもなく簡単に交換してしまうのだった。
まさか俺の連絡先の欄に妹以外の字が刻まれることになるとは。
そんなことを考えながら女の子を安全な場所まで送った。
「では私はひとまずこの辺りで。またご連絡差し上げますので」
「あっうん。またね」
女の子と連絡先交換をして浮かれていた俺はこの時大事なことに気がついていなかった...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます