画面を通さず君を見たい
僕と由美さんの出会いは満員電車の中。たまたま座ってる由美さんの前に僕がいて、体調が悪くなった僕に彼女が席を譲ってくれたのが始まりだった。こんな冴えない僕を気にかけてくれるなんて彼女は天使かと思った。顔も学歴も背も何もかも平々凡々の僕があんな可愛くて綺麗な人に声掛けてもらえる経験人生で1度あるかないかの経験だ。そこから僕は彼女の家に行ったり会社について行ったりして彼女を見守る立場に昇格したのだ。
だから僕は毎日彼女を見守る。
彼女を見守り続けて早1年、ふと彼女がこちらを見た気がする。あれ?気のせいかな?きっと気のせいだ。でもそれから何度か目が合う気がするのだ。目が合っているなら一大事だ、どうにかしないと。
「今日の夜ご飯は何にしようかな」
彼女は今日の夜ご飯の献立を決めかねているようだ。僕は·····
「生姜焼きがいいなぁ」
なんてね!自分で自炊するのがめんどいからやらないけど久しぶりにちょっと手の込んだものを食べたい気分。
「よし!生姜焼きにしよう!」
なんと彼女は生姜焼きを作るようだ。これが心が通じあっているということなのか。
それから数日間彼女は僕がポロッとこぼした食べたいものを作るようになったのだ。初めのうちはこんな偶然が重なって心が本当に通じあっているかもと高揚したが、何だかとても怖くなってきた。
もしかして、彼女は僕に気づいているのだろうか?いや、でもそれでも僕の言ってること分かるわけ、
「そんなわけないよな、」
洗濯物を畳んでいる彼女がくるっとこちらを向いた。
「今日の夜ご飯何がいい?」
彼女の目はしっかりと僕を見ている。
洗濯物を畳んていた彼女の手にはスマートフォン。その画面を見ると間抜けな顔をした僕の顔。
僕達は両思いだったようだ。
人の振り見て我が振り直せ 輪切りの檸檬爆弾 @syunkasyuto-hanayorishitai
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