第115話 企み? 違う、俺の自己満足だ
「別に……何も企んでなんかいませんよ」
「……ジン殿。交渉をするなら、嘘は無しだ。この取り引きは、明らかにアルラギア帝国に有利過ぎる。こんな怪しげな取り引きに引っかかる我々ではない」
「…………」
本当に、何も企んでなんかいないんだけどな。
だから、この二人を入れ替えれたとして、アルラギア帝国でもセトロベイーナ王国でも留守番要員ぐらいにしか絶対にならない。
それに……これは俺の勝手な自己満足で、ただの偽善。
セトロベイーナ王国の人々もだ。
どうせ……女神の加護を持った人間は、いくらこの世界の人間に殴られようが、酷い拷問されようが死なないんだ。
奴は、せめてもの償いとしてセトロベイーナ王国の人々のサンドバッグになるべきだと思っている。
自分の行動で一体、どれだけの人間が死に……どれだけの人間がお前に怒りを抱いたのか。
身を持って知るべきなんだよ。
「……セトロベイーナ王国を出る前、テラハラに助けを求められました。今、彼女は一人でセトロベイーナ王国の人々の怒りを受けています。アルラギア帝国の勇者パーティーの一員だと知られているので当然ですが」
「……つまり、この取り引きはテラハラ殿を助けたいがための取り引きだと?」
「……まあ、そうですかね。元々二十八人……ああ、俺を含めたら二十九人か。二十九人いたはずが、既にもう俺の知っている限りでは、八人死んで二十一人になっていますから、これ以上かつての仲間が死んでいくのはキツイですね」
「……そうか、もうそんなにも多くの女神の加護を持った人間が……死んでいるのか」
オリヴェイラ様は悲しそうに話す俺を同情した様子で見てくる。
……自分で喋っておきながら、中々酷い嘘だと思う。
あのクラスに、かつての仲間と思っている人間なんてほとんどいない。
むしろ、クラスメイトが死ねば死ぬほどこの世界では俺が有利になるので、喜んでいた。
もちろんあいつらを助けてやらなかったことに関しては、後悔していない。
逆にこの世界で好き勝手してた奴らを助けて、もし
それにまだ会うべき人間がいる。
この二人には絶対会って色々と話さなければいけないことがある。
そのためなら、大して仲良くもなかった連中がどうなろうが俺には関係ない。
本当の仲間と再会して、残りの魔王軍幹部……そして魔王を討伐し、必ず俺は元の世界に戻る。
「八人……? 嘘……うちが知っている限りじゃ五人だったのに……どうして……」
「レア殿……辛いな……」
クラスメイトが八人も死んでいたことにショックだったのか、麗蒼は泣き出してしまう。
ああ……なんで俺は麗蒼みたいに泣けないんだろうな。
ある程度一緒に過ごした人間が死んでいる……もしくは自分の手で終わらせたのに、何故泣けないんだろう。
自分の冷酷さに泣きたくなってきちゃうね。
「あら、もうそんなに亡くなっていたのね。一応、誰が亡くなっているのかだけは聞いておこうかしら」
「こ、
「…………」
一方、国分と麗翠は全く泣いていない。
麗翠は元クラスメイトの連中に見捨てられたせいで、酷い目に遭っていたから分かるが……お前はなんなんだよ国分?
俺に文句言う資格はないから、何も言わないけど。
「まずさっきから話しているセトロベイーナ王国は三人……
「あら、流石ね。やっぱり元の世界でも結果を出していた人間は、異世界でも結果を出すのね。亡くなった三人には悪いけど……どうしてその戦力で挑んだのかしら? そこに無能の回復術士を加えただけのパーティーでしょう?」
「い、色々あるんだよ国分さん……あと、
「知らん。魔王軍に寝返って、大関やこの世界の人間を大量に殺した奴らの名前なんか覚える価値もないね。そして、アルラギア帝国が二人だろ?
「あの男が、盾代わりにして殺した二人ね」
「あの男ってなんだよ、
「笑わせないで? あんな男の名前なんか口にも出したくないわ!」
……自己中の塊というか権化の国分にすら嫌われてる岸田ってもうなんなんだよ。
俺も大嫌いだけどさ。
「そして……どこの国にはいたのか分からないが、委員長の
「嫌ねえ……本当あの男は……はぁ……オリヴェイラ様? そして麗蒼さん?」
岸田に呆れながら、国分は泣いている麗蒼とそんな麗蒼を慰めるオリヴェイラ様の方へ向く。
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