第98話 虹の教団と裏切りの四騎士
「あ? 上様には、俺が誰と組んでいたか教えてなかったか?」
「誰と組んでいたかは聞いてない。三人とも牢にぶち込んだとは聞いたが」
「……そうだったか? 悪い悪い」
どうやら
まあ、元の世界にいた頃から自分の興味無いことはすぐに忘れる……というか覚える気が無い人間なので、気にせず神堂の話を聞く。
「俺と組んでいたのは、
「……は? おい、それ本当か?」
「自分から取引持ち掛けといて、嘘言ってどうすんだよ? 俺がここに来たのも、俺と組んでいた三人の死体をネグレリアに売った連中がいるって情報を聞いたからだ。ネグレリア倒すついでに、もしかしたら三人の死体に何か手かがりが残っているかもしれねえと思ってな」
「…………」
俺と仲良かった奴が殺されてなくて良かったとホッとする反面、この世界の人間が金のために、ネグレリアに死体を売っていたということが本当のことだと分かってしまい、腹が立つ。
もしかしたら、ネグレリアが俺を動揺させて冷静さを奪う目的で嘘を言っていただけ……って可能性もあるんじゃないかと思っていた。
でも、事実だった。
……これが事実ということは。
リベッネの死体を金目的でネグレリアに売ったクズ共がいるんだ。
……落ち着け、腹立つけど今はキレるな。
俺は、ネグレリアに死体を売っている連中のことを何も知らない。
ここは冷静に神堂の話を聞こう。
もしかしたら、神堂の持っている情報と俺の持っている情報を合わせれば、何か分かるかもしれない。
「そういや、何か手かがりはあったか?」
「まだ探してはねえが……伊藤と中村の死体はバラバラにされていて、メガネの死体も……ああ、ネグレリアの魔法が切れたらあのザマだ。つまり、ここには何もねえってことだな」
神堂はそう言うと、近くに転がっていた
見ると、ネグレリアの魔法が切れた隼の死体は、誰か分からなくなるほど損壊していた。
これでは、素人の俺達がいくら手かがりを探そうとしても、何も見つけられないだろう。
デカイ組織……もしかしたら一つの国ぐるみとかが死体売買に関わっていたということぐらいしか分からないな。
この大広間を見ても。
複数の国から数万人分の死体を集めて、ネグレリアに売るなんてことは、まず個人じゃ無理だろうし。
俺がそんなことを考えているその時だった。
神堂がとんでもないことを言い出した。
「……やっぱり、虹の教団とかいう連中が関わってんのか? この件は?」
「……何だと?」
虹の教団。
ケント達が調子に乗る原因を作った連中だ。
忘れるわけがない。
だが、何故この件であのイカれた連中の名前が出てくる?
当然俺は困惑している。
「上様、何か知ってんのか? 俺は名前しか知らねえんだ」
「……女神イーリスを崇拝する巨大宗教団体らしい。多くの国に信者がいるらしくてな。信者数は数百万人ぐらいいるんだとよ」
神堂に虹の教団について分かることを話す。
といっても、アイドラさんとメリサさんから聞いた話をそのまま話すだけだが。
「イーリスを崇拝ぃ? 珍しい奴らがいるもんだなぁ? しかも数百万人って……待てよ? 数百万人もいれば、これだけ多くの死体を集めてネグレリアに売るのが可能だな。……なるほど、そういうことか……」
神堂は何故か納得したように頷く。
……いや、お前のその考えおかしいだろ。
なんで、イーリスを崇拝している連中が、敵の魔王軍幹部であるネグレリアに協力するんだよ。
「虹の教団は死体売買に関わってないだろ? イーリスを崇拝している連中が、魔王軍幹部に協力するか?」
自分の心の中だけで留めておくつもりだったが、思わず俺は神堂に突っ込んでしまう。
だが、神堂は笑いながら答える。
「おいおい、この世界の連中は知らねえだろ? 元々はイーリスに仕えていた四騎士がイーリスを裏切って、魔王軍に寝返ったってことを」
「……どういうことだ?」
神堂の言っている言葉の意味が分からない。
イーリスに仕えていた四騎士?
そいつらが魔王軍に寝返った?
だが、そんな俺を気にすることなく、神堂は話を続ける。
「始まりの場所で、イーリスから説明されたろ? 魔王軍幹部の一番目から四番目は、イーリスに仕えていた四騎士だから、強さのレベルが違うって。覚えてねえのか?」
……覚えているわけないんだよな。
神堂と違って、イーリスに異物扱いされた俺は、始まりの場所から、すぐに謎の教会に飛ばされてるし。
……というか、イーリスも俺に教えろよな。
そんな話、一切聞かされた覚えが無いんだが?
「……二年以上も前の話だから忘れてた」
「しっかりしろよ上様? それを知らずにネグレリアと戦っていたのか?」
「……そういえば、イーリスを裏切ったってネグレリアも言ってたな」
「それをこの世界の連中は知らねえ。だから、虹の教団の連中はネグレリアに協力していたんだよ。イーリスを崇拝している連中が、イーリスに仕える四騎士の一人の頼みを聞かねえわけがねえだろ?」
「ああ……そうだな」
俺は忘れていたフリをしてごまかす。
……というかそんな重要な情報をなんで俺に教えてないんだ?
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