第99話 お互い、生きてまた会おうぜ
「そんなことより、名前だけしか知らなかったってことは、虹の教団の本部がどこにあるか知らないんじゃないか?」
ネグレリアを含めた裏切りの四騎士絡みの件については、本当に何も知らないので、このまま
なので、あからさまに話題を変えた。
「虹の教団について、他にも知ってることあんのか?」
「知ってるも何も、俺が元々いた国に虹の教団を作った教祖がいて、本部もあるわけだからな」
話題を変えるためというのもあるが、正直、潰してくれるんなら、神堂に
そんでもって、ついでにケント達も。
だから、神堂には情報を話しておいたほうがいい。
「虹の教団の教祖は、ボルチオール王国の王妃だ。本部は恐らく王都のカムデンメリーにあると思う。教祖である王妃がいるわけだし」
「……ボルチオール王国ぅ? 本当か? 上様?」
神堂が何か引っかかったようだ。
どうやら、ボルチオール王国に聞き覚えがあったみたいだ。
「どうした? ボルチオール王国を知っているのか?」
「知ってるも何も、岸田達がいるアルラギア帝国の次のターゲットになってる国だぜ? ボルチオール王国って」
「……え?」
思わず、間抜けな声が出る。
そんな話知らなかった。
ボルチオール王国がアルラギア帝国の次のターゲットになっていたなんて。
いやいや……マズい。
マズ過ぎる。
ボルチオール王国がアルラギア帝国に勝てるわけがない。
サタン程度に苦戦していたボルチオール軍と無力化となったケントとサラという無能に加え、頼みの女神の加護持ちはアンリとニーナだけ。
……勝つ可能性はゼロだな。
「どうして、ボルチオール王国がアルラギア帝国の次のターゲットに?」
「さあな、そこまでは知らねえ。でもまあ……丁度良いな。岸田達も虹の教団も一気に潰せる。しかも、ボルチオール王国には確か魔王軍の幹部ヴェルディアもいたろ? いやー俺にとっては最高だ。一石二鳥どころか一石三鳥だ」
神堂は満面の笑みだった。
まあ……そりゃそうか。
岸田達を倒せば、
更にヴェルディアを倒せばヴェルディアの持つ魔王の剣も手に入る。
虹の教団という、自分にとって目障りな連中を潰せる上に、女神の橙と魔王の剣が二本も手に入るチャンスなんだ。
そりゃ、神堂も笑わずにはいられないだろう。
しかもそれだけじゃない。
一人で岸田達を含めたアルラギア帝国軍を全滅させたとなれば、神堂を欲しがる国は、多く出てくるだろう。
そうなれば……神堂が目指す、最強の存在というのを笑ってられなくなるな。
夢や妄想なんかじゃない。
神堂が最強の存在というのが現実になる。
「こうしちゃいられねえ。悪いが上様、俺はもうボルチオール王国に向かわせてもらうぜ? アブソープション」
神堂は笑顔のままそう言うと、ネグレリアの持っていた魔王の剣を魔法で吸収し始める。
……ご機嫌だな。
ボルチオール王国を舞台に、岸田達のいるアルラギア帝国軍と殺し合う……いや、全滅させる気満々だ。
「……あんま、派手にやるなよ。この世界の人間だって、生きているんだから」
「それは、岸田達次第だな。早めにアイツらがさっさとくたばれば、周りに被害が及ぶことなく終わるさ」
「…………」
つまり岸田達が抵抗すれば、所構わず魔王の剣の力を使うってことじゃねえか。
イグフォノス、フィスフェレム、そしてネグレリアの力を神堂は使えるようになるんだぞ。
その力を街中でなんて使ったら……。
「よし、終わったな。ほら、女神の黄やるよ」
「お、おい!? 投げんなよ!」
ネグレリアの魔王の剣の吸収が終わったのか、神堂は魔王の剣を鞘に収め、これで取引完了だと言わんばかりに、女神の黄を俺に投げて渡す。
いくら鞘に入っているとはいえ、剣を人に向かって投げるとか、本当に神堂は頭がおかしい。
しかも一応女神の剣だぞ? この世界で売ったら、とんでもない値段になる高級品をよくもまあ……そんな雑に……。
……ってか、取引しといてあれだけど、本当に女神の黄貰っちゃったよ。
あまりにも、俺に得な取引だから偽物渡されるんじゃないかな? とか思っていたら、本当に本物渡されちゃったよ。
「ナイスキャッチ! それじゃあな上様。お互い、生きてまた会おうぜ」
そう言い残し、神堂は俺の目の前から消えた。
……生きて会おうぜか。
自分が負けるとは全く思っていないのが、神堂らしいな。
「
神堂がいなくなったので、女神の黄を他の女神の剣と同じように、女神の黒に一体化させる。
これで女神の剣四本目か。
なんか、意外な形で手に入れたな。
しかも、
まあでも、一番目と二番目に強い女神の剣を持っていないからな。
一概に俺達二人が最強というのもまた違う。
……最強だと言うのなら。
リベッネを……守ってやれたはずなんだ。
……そうだ。
リベッネの首だけでも回収……。
「……ああ、そうか。ネグレリアの魔法切れたんだった」
既に腐敗したリベッネの生首を見て、自分はもっと強くならないといけないと再確認する。
こんな思いを二度としたくないのなら。
もっと強くなるしかない。
麗翠が迎えに来るまでの間、ずっと一人で俺は、この大広間に広がる地獄の光景を目に焼き付けるのだった。
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