第11話 元の世界でダメな奴らが異世界なら活躍するとでも?
「昔からの言い伝えで、虹の女神イーリスは魔王軍七幹部を倒せる七人の勇者を選ぶということは知っていました。……ですが、まさか勇者ケントが一番最弱の勇者だとは……」
サンドラさんのお母さんは困惑していた。
口には出していないが、その表情は自分が聞いていた話と違うと言っているようなものだった。
「あーもしかしてケントから真実を聞かされていなかったんですか。ちゃんと言わなきゃダメですよね。ああ! だからこの国の人達はあの
遠回しに期待しているお前らがバカなんだぞと教える。
イーリスが選んだ勇者とその仲間だからって、過大評価し過ぎなんだよ。
そうして、お前らがチヤホヤし続けた結果が魔王討伐を拒否する勇者パーティーの出来上がりだからな。
まあ、仕方ない。
幼馴染である俺からのケントの印象は、元の世界じゃ怒られている所は結構見たことはあったけど、褒められている所なんかほとんど見たこと無かったし。
だから、ケントがこの世界でチヤホヤされている時にもう分かったね。
あ、コイツ絶対に元の世界になんか帰りたくないだろうなって。
だけどそれじゃあ、困るんですよ。
俺も異世界の連中も。
ということは、嫌でも元の世界に戻りたいと思わせるしかねえよな?
本当のケントの実力を話して、この国の連中からの評判をガタ落ちさせてやるしかねえ。
そうすれば、嫌でも元の世界に戻りたいと頑張るだろうからな。
俺はたっぷり味わったぜ?
この二年間、お前らをチヤホヤし続けたファウンテンの人間からの嘲笑をな?
今度はお前の……いや、
ケント、アンリ、ニーナ、サラ。
お前ら
あの地味ーズ女子三人にも腹立っているからな。
同じパーティーなら提言くらいしたらどうなんだ?
だから、
……俺に殺される前イーリスは、もしケントが死んだら、君が七番目の勇者になれば良いんだ! 何だ君にも存在意義あるじゃん! とかふざけた事を言っていたが、ゴメンだな。
間違って俺を勇者パーティー召喚に巻き込んだ挙げ句、余り物扱いして謝罪もしなかった無責任な女神イーリスの言うことを聞かずに、殺してイーリスの力を奪って正解だった。
あのまま、イーリスの言うことを聞いて、ケントが死に、アンリ、ニーナ、サラとパーティー組むとか俺には無理、耐えられない。
大して可愛く無い上に、魔王討伐する気は無いし、チヤホヤされてケント程じゃないが調子にも乗ってるからな。
マジであの三人何も長所ねえじゃん。
あー腹立ってきた、もっとバラそ。
「そもそも、あの四人は元の世界じゃ頭も良くなかったですし、運動能力も凄く無かったですからねえ……。こんな事言うと激怒されるでしょうけど、元の世界じゃ大成はしなかったですよ」
「……少し言葉を選んだ方が良いわよ? ジン君。同じ世界から来たんだから仲間だったんじゃないの?」
サンドラさんのお母さんは、俺に苦言を呈する。
が、それに俺は腹が立った。
……仲間?
ふざけんな。
あんな奴ら仲間でも何でもねえ!
陰でこの世界の人間と一緒に、俺を嘲笑っていた奴らを仲間だと思う訳がねえだろ!
……とまあ、ブチギレて言ってやりたい所だけど、相手は恐らく権力者だから辞めておこう。
とりあえず、あの
「じゃあ、逆に教えて下さい。俺は勇者として戦うのなら、頭も運動能力も無いよりはあった方が良いと思ってます。それとも女神の加護さえあれば、極端な話、バカで剣も扱えないような運動能力でも良いんですか?」
「それは……」
「ですよね? 頭も運動能力も無いよりはあった方が良いですよね? それが七組の勇者パーティーの中じゃ最低だと女神イーリスが評しているんです。いい加減その現実をこの国の人間は知るべきだし、受け入れるべきだと思います」
「……」
過度な期待をした所で、過大な評価をした所で、ケント達はヴェルディアに勝てない。
決して嫌味で言ってる訳じゃない。
そして、この事はこの国の人間に教えるつもりは無いが、ヴェルディアは魔王軍七幹部の内、三番目の強さらしい。
イーリスが俺に殺されたくない為、女神の加護が無ければ、君の幼馴染である勇者ケントは絶対にヴェルディアに勝てずに死んじゃうから、殺さないでと命乞いをしてきたから、間違いないだろう。
「……厳しい言い方ですけど、元の世界で大したこと無い奴らが、異世界で魔王軍七幹部の一人を倒すなんて偉業を成し遂げられるとは思いませんね。たとえ、ケントが女神の加護、そして女神イーリスが与える七つの剣の一つ、
「それじゃ、わたし達はどうすれば良いのよ! ヴェルディアの恐怖に震え続けろと?」
……そこで、この世界の人間で力を合わせてヴェルディアを倒そうって考えはねえのかよ。
どこまで、イーリスが選んだ勇者頼みなんだ?
だから、
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