第10話 そもそもアイツらの実力知ってます?
数十分ほど続いた母娘喧嘩は、サンドラさんのお母さんが言い放った言葉で決着が着いた。
「そんなだらしない生活しているから、恋人を騎士なんかに寝取られるのよ! むしろ彼はあなたを捨てて他の女に乗り換えて正解だったと今でもわたしは思っているわ!」
この言葉にショックを受けたサンドラさんは、泣きながら何も言わず部屋を出ていってしまった。
ひ……酷すぎる……。
いくら事実であったとしても、もう少しオブラートに包んでやれよ。
……まあ、こんな酷い言葉が事実になってしまうサンドラさんにも問題がないとは言えないけどさ……。
「申し訳ございません。本当にお見苦しい所を……。ジ……ン? さんでしたか?」
「……あ、い……いえ……」
サンドラさんのお母さんに謝罪されるが、俺は愛想笑いで返す事しか出来ない。
謝罪なんかされても愛想笑いするしかねえだろ。
いやー全く! お母さんの言う通り! サンドラさんはだらしない! なんて言えるか!
「……そ、それじゃあ……本題に戻りましょうか? 俺に勇者パーティーの連中の事について聞きたかったんですよね?」
時間にして、一時間だろもう。
ようやく、話が進められるな。
「そうですね。では、単刀直入に聞きましょう。勇者パーティーは、魔王を討伐する気があるのでしょうか?」
「……」
おいおい。
また答えにくい質問を……。
ここで俺はバカ正直に「はい! 勇者ケントを始めとした勇者パーティーは、魔王を討伐する気なんか全く無いです!」なんて答えて良いんだろうか?
すると、サンドラさんのお母さんは、何かを察したように、話を続ける。
「あなたのその反応でもう分かりました。なるほど、勇者パーティーは魔王を討伐する気が無いという事ですね」
「……」
まずい。
まずいぞこれは。
ケント達が魔王討伐をする気が無いとバレたら、それを知りながら二年間何もしてこなかった俺にまで、飛び火しそうだ。
そもそも異世界の連中がもっと努力して強くなって、自分達で魔王討伐しろよ! アホか! と言いたいところだが、異世界の連中はケント達が魔王討伐をしてくれると思ったから、様々なサポートをしていた訳だからな。
少しとはいえ、その恩恵を受けていた俺にも、ファウンテン? だっけ? この街の連中やこの国の連中からのヘイトが向かないとは限らないからな。
……仕方ない。
少し嘘(大嘘)を混ぜた真実を話すか。
「アイツらは、別に魔王を討伐する気が無い訳じゃ無いです。無いのは実力ですよ。実力。そんな事、俺みたいなどこの馬の骨か分からない男が言ったところで誰が信用してくれると言うんですか?」
俺は敢えて、ヘラヘラと笑いながら、サンドラさんのお母さんに話す。
まず、ケント達はやる気云々よりも、元々の実力が無いと話してやらねえとな。
「……女神に選ばれた人間が実力が無いですか……。信じ難い話ですね。サンドラも同じ様な事を言っていましたが」
「まあ、そうでしょうね。所詮、俺もサンドラさんも女神に選ばれた人間じゃない。という事は魔王を討伐出来る人間じゃないと烙印を押されたようなものですからね」
「……そうですね。その通りです。サンドラも魔法剣姫などと大層な名前で呼ばれていますが、所詮は女神に選ばれなかった人間です」
「……」
サンドラさんのお母さんの言葉を聞いて、俺は一つ確信を持てた。
何故、あんなにもケント達がこの世界の人間からチヤホヤされているか。
異世界の連中……は、言い過ぎか。
ファウンテンの街、この国の連中にとっては、女神……
じゃあ、この国の連中の勇者ケントを始めとした
この話をしてしまうと、勘の良い奴か頭の良い奴なら、この国はイーリスから重要とされていないということに気付いてしまうから、黙っておいたんだけどな。
というか異世界の連中もそろそろ気付けよ。
ケント達じゃ、魔王軍七幹部の一人ヴェルディアに勝てないということを。
虹の女神、イーリスがもう死んでいる……いや、イーリスが既に自分が選ばなかった余り物の俺に殺されているということを。
ため息を吐きながら、俺は話を始める。
そして、敢えてサンドラさんのお母さんを挑発するようにニヤニヤと笑いながら。
「前々から思っていたんですけど、サンドラさん以外のファウンテンの街のに……いえ、この国の人間って見る目無いですよね?」
「……どういう意味かしら?」
「そのままの意味ですよ。まさか、勇者ケントを始めとしたあの
「……」
サンドラさんのお母さんは俺の言葉に何も言い返してこない。
まあ、そもそも女神に選ばれなかった雑魚が調子に乗るなと言いたげだが。
「真実を全て話しますよ。俺が知っている全てを。たとえば、虹の女神イーリスが選んだ勇者は七人いて、この国に派遣された勇者ケントはその七人の中で、一番最弱。七番目の勇者だということだったりとか」
最弱勇者の事を話しますよ~。
女神に選ばれなかった、最弱にすらなれなかった余り物、間違って
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