第12話 女神の黒(イーリス・ブラック)
「方法なら一つあるじゃないですか?
「……ジ、ジンさん? あ、あなた……何を言っているの?」
おかしいな。
わたし達はどうすれば良いのよ! ってキレ気味に聞かれたから、ケント達を街から出れないように監禁するという方法を教えたのに。
そうすれば、ヴェルディアを始めとした魔物やモンスターが攻めて来なくなるんだから、ヴェルディアに対して恐怖で震え続ける事も無くなるじゃん。
何で、サンドラさんのお母さんはドン引きしているんだろ?
「俺、そんなにおかしな事を言いましたか? ケント達の長所って、ファウンテンの街に居さえすれば、街にヴェルディア達が攻めて来ないって所しか無いじゃないですか?」
「彼らは、女神イーリスに選ばれた勇者なのよ! そんな事をしたら、王を始めとした国の重鎮達にわたし達が反逆者として投獄されてしまうわ!」
……チッ。
サンドラさんのお母さんの口振りからすると、ケント達は王とか、この国を動かしている連中と仲が悪くないのか。
二年もの間、アイツらが結果を出していないから関係が悪くなっているか、もしくは魔王とは言わなくとも、ヴェルディアの討伐を催促されていると思っていたんだが、誤算だったな。
ケント達をファウンテンの街に監禁して貰っている間に、ヴェルディアの待つ城へ一人で行って、部下のヴェブナックもろとも討伐するつもりだったんだが……。
まあ、一人で倒せるかどうか分からないけどな。
でも一応女神のイーリスを殺せたんだから、ヴェルディアも倒せそうな気がするんだよな。
……イーリスがヴェルディア以下の実力だったとしたら、俺死ぬの確定だけど。
それよりどうする?
俺がヴェルディアの城に行っている間に、またケント達がファウンテンの街から出たら、街が危ないよな。
……それに、俺がヴェルディア討伐に行ったと聞けば、ケント達が討伐の邪魔をしに城まで追ってくるかもしれない。
アイツらは、元の世界へ帰りたくない訳だからな。
この状況が永遠に続いて欲しいと願っているんだろうから。
そうなれば、また街はサタンを始めとした魔物やモンスター達に襲われて、建物は壊れ、人が死ぬんだろうな。
あー嫌だ嫌だ。
結局、
……もし、ケントが死んだら君が七番目の勇者になればいいじゃん! か。
……まあ、今のケントは死んでいるのと同じようなもんだろ。
何もしていないのに、イーリスが選んだ勇者というだけで人生イージーモード。
皆に褒めて貰える。
あの地味ーズ女子三人もそうだな。
アイツらも絶賛されているけど、所詮は、女神の加護があるから。
アイツら自身の実力じゃねえ。
「……もう一つだけ方法がありますよ。俺がヴェルディアを討伐するって」
「ふざけないで下さい。女神に選ばれなかっ……!?」
俺はアイツらのような、女神の……イーリスの加護の力で強さを手に入れた、口だけの連中とは違う。
たとえ、女神に選ばれた人間でなくとも必ず魔王を討伐する。
イーリスが俺に渡し、そして俺が自分の手でイーリスの全ての力を奪い、その全ての力を込めたこの剣で。
だから、俺は言葉じゃなく行動で示す。
「驚きました? 何故俺がケントと同じ
「な、何故あなたがそれを……!? それに、虹の七色に黒なんて入っていないはず! 赤・橙・黄・緑・青・藍・そして紫! 黒の女神の剣なんて聞いた事ありません!」
サンドラさんのお母さんの話のお陰で一つ気付いた。
だから、イーリスに七人の勇者の中で最弱と言われたケントが
虹色の一番上は赤、そして一番下は紫。
七人の勇者の中でナンバーワンの奴が、
つまり、色を見ればそいつが何番目の強さなのか分かるって事か。
他の国で見掛けたら、女神の剣の色を確認するようにしよう。
その前に俺がイーリスから貰った、黒い女神の剣について説明しなきゃだな。
「
「女神イーリスそのものの力……!?」
やっぱ、この黒い剣スゲーな。
魔王軍幹部の直属の部下のヴェブナックすら、見ただけで警戒して侵略行為を辞めて、ヴェルディアに報告の為に城へ帰るレベルの代物だからな。
俺がヴェルディアを倒すって最初に聞いた時は、バカを言うなって反応だったのに、この剣を見せただけで、もしかしたらヴェルディアを倒してくれるかもしれないって、サンドラさんのお母さんが思い始めているし。
とりあえず、女神の黒を見せた後は簡単だった。
サンドラさんのお母さんは手のひらを返したように、俺の一言一句に同意し始め、俺の聞きたかった事をペラペラと喋り始めたので、三十分も掛からず俺の目的は達成された。
……うーん、この世界の人間は現金なんだなあ……。
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