第9話 手打ちか半殺しか

 桃太郎かぐやひめはいつの間にやら寝入りたりける眠ってしまっていました。ふとおどろく目が覚めると、隣の部屋より何やらひそひそと小声に小声で話す声きこへける声が聞こえました


「…手打ちにするか、半殺しにするか…」


 これ聞きてコレを聞いて桃太郎かぐやひめ喜びたる喜びました


「これ、知ってるわ。昔話で聞いたもの。

 手打ちと半殺しって一見物騒に聞こえるけど、実は『手打ち』って手打ち饂飩うどんのことで、『半殺し』って米を半分潰して作る牡丹餅ぼたもちのことなのよね?

 こんな休憩に立ち寄るだけの廃村の漁師小屋でそんな手間のかかるものを用意してくれるなんて、あの人たち見た目からは想像できないくらい優しい人たちなのね」


 やがてそのまま桃太郎かぐやひめ部屋に待てる部屋で待っていると、思ひのほかとく思いのほか早く男どもの男たちがぞろぞろと部屋の方へ寄りくる気配せり寄ってくる気配がした

 いまいそぎのえしやもう準備が整ったのか桃太郎驚きかぐやひめは驚き、部屋の奥に身支度を整へてまうけたる整え待ち構えていると、スッと戸開けられ戸が開けられ、男どもが姿を現しける現しました

 男どもの手には饂飩や牡丹餅などは無く、荒縄や棍棒握られたりき荒縄や棍棒が握られていました


「何じゃ、起きとったんか…」

女子おなごよ、大人しくしとりゃ痛い目にあわせんで済むけん、こいコレで縛られちくりぃ」

「手向かうようなら、半殺しぐれぇにはせにゃならんかもしれんけんのぉ」


 男どもは口々にさ言ひつつそう言いながら桃太郎かぐやひめ囲みそめき囲み始めました


「な、なんのつもりですか!?」


「鬼ヶ島へ送られるってぇんなら、アンタ生贄かなんかじゃろ?

 つまり捨てられた女子じゃ。」

「どうせ捨てられたっちゅうなら、オラたちが拾ってやろうっちゅうこっちゃ」

「アンタみてぇな別嬪べっぴんさんなら、たこう売れるじゃろうて」

「その前に、オラたちが可愛がってやるけんのぉ」


 もののあはれも知らぬ荒くれども道理を弁えない荒くれ男たち笑ひつつ笑いながら桃太郎かぐやひめ囲みけり囲みました


「近づかないで!」


 桃太郎かぐやひめ鉈抜き放ちて身構へける鉈を抜き放って身構えました


そげん細かモンそんな小さい物で何ができる?」

「大人しゅうすりゃ、痛い目にあわせんですむんじゃがのぉ?」

「さあ、そげなモンは捨てて観念せい」


 男ども男たちが一歩前へ踏みいだす踏みだすと、ヒョウッとて風鳴りヒュッと風が鳴り鉈の煌めきける鉈が煌めきましたすと次の露の間すると次の瞬間男ども男たちの手に握られし棍棒が二つに切られ握られていた棍棒が二つに切られ、ボトボトと床に落ちける落ちました


「ひぃ!?」

「な、何じゃあ!?」


 男どもはいと驚きて大変驚いて思はず後ずさりける思わず後ずさりしました

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