第8話 廃村

 桃太郎立ち上がりて浜を見渡せどかぐやひめは起き上がって浜を見渡してみましたが、あたりに人影はなく、誰もあるまじかりき誰もいないようでした


「犬吉さーん! 猿彦さーん! ……誰かいませんかー!?」


 あらぬ極みの声いだして呼べどもあらん限りの声を出して呼んでみましたがかへりごとはあらず返事はありません

 船も船に載せし諸々載せた荷物も犬吉も猿彦もさながら失ひにけめりすべて失ってしまったようです


 桃太郎かぐやひめ残されしもの残された物は、ただ手に握れる握っていた一つ一丁と、小分けにし小分けにして懐中に入れおきし入れておいた鬼魅団子きびだんごのみ。


 桃太郎かぐやひめは遠くに煙立ち昇れるを見つくと煙が立ち昇っているのを見つけるとあなたに人のあるに違ひなしと思ひあそこに人がいるに違いないと思い、鉈を鞘に納め、助け求めて歩みそめき助けを求めて歩き始めました。煙の見えし方へ向かひ見えた方へ向かって森抜け森を抜け小さき小さな山を越ゆ越えると、やがて小さくさびれしさびれた漁村にたどり着くべかりき着くことができました


「ごめんください」


 桃太郎かぐやひめは一軒の家をとぶらひき訪ねました。中にはいぶせき汚いなりの男どもがおり、火焚きて鍋に何か作れべかりし火を焚いて鍋で何か作っているようでした

 男どもは突然うちいでし現れた桃太郎かぐやひめいと驚きけるたいへん驚きました


「こ……これはこれは、このような廃村にアンタのような女子おなごがどうなすったぇ?」


「廃村?」


「んだ。ここはとっくに廃村で、誰も住んでねぇ」

「オラたちゃあ、かぃ……漁師で、漁の途中でたまにここで休ましてもらっとるだけだぁ」


「そうですか……実はわたくしは旅の者です。

 鬼ヶ島へ送られる途中で嵐にい、船が転覆し、仲間とはぐれ、ただ一人で近くの浜に流されたのでございます」


「なんと、鬼ヶ島へ!?」


 男どもは桃太郎かぐやひめ話聞きていと驚き話を聞いてたいへん驚きかたみに顔見合はせ互いに顔を見合わせ何ごとか小声に話すると何か小声で話をすると桃太郎かぐやひめ言ひける言いました


「そらぁさぞかし難渋しとるこっちゃろう。

 鬼ヶ島へは無理だけんど、近くの村までは船でおくっちゃろう」

「もしかしたらお連れの人も来るかもしんねぇ。

 今日はここで休んで、明日んなったら船を出しちゃろう」


「ありがとうございます」


 桃太郎かぐやひめは礼を言ふと言うと、男どもに案内され、奥の部屋へ入りける入りました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る