第7話 漂着

 船に積まれたりし諸々の物も人もさながら積まれていたあらゆる物も人もぜんぶ海に投げこまれにけり投げ出されてしまいました


「ぷはぁ! 猿彦ぉー! 猿彦何処だぁー!?」

「犬吉ぃー!! 犬吉ぃー!!」


 遠くより遠くから二人がかたみ呼び合ふ声がきこゆれど互いを呼び合う声が聞こえるけれど、姿はなみに隠れて見えず見えません


「犬吉さーん!! 猿彦さーん!!」


 桃太郎かぐやひめも二人を大いなる声に呼べど大きな声で呼びましたがかへりごとはあらざりき返事は返って来ませんでした


「で、出たぁーーー!!!」

「ば、化け物だぁぁぁーーー!!!」


 稲光が走り、雷鳴轟き、犬吉と猿彦の泣きののしる声きこえゆきき泣き叫ぶ声が聞こえてきました

 見上ぐるに見上げると黒雲渦巻く黒雲が渦巻いている空に大いなる竜立ち上がり巨大な竜が立ち上がりこなたを見下ろせりこちらを見下ろしていました


「ウソ!! ホントに竜がいたの!?」


 桃太郎ひとりごつとかぐやひめが呟くと、竜は口開けて大いなる声に吠え口を開けて大きな声で吠えやがてそのまま海へ飛び込みたる飛び込みました山のごとき大いなる浪立ち上がり山のような大きな波がおき桃太郎かぐやひめ浪間に飲み込まれにけり波に飲みこまれてしまいました


 いつの間にか犬吉と猿彦の声もきこえずなり聞こえなくなり桃太郎かぐやひめは大海原に一人なみ に揉まれ、浮き沈みしつつもがき続けり浮いたり沈んだりしながらもがき続けました


 いかばかりほどの経りしためしならむどれほど時間が経ったことでしょう


 気が付かば気が付いてみれば桃太郎かぐやひめは一人砂浜に打ち上げられたりける打ち上げられていました

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